創始者に聞く ニューウェーブ「豊前うどん」はなぜ生まれた?

特集

いま、福岡のうどんが気になる!

2017/09/19

創始者に聞く ニューウェーブ「豊前うどん」はなぜ生まれた?

今、福岡で勢いに乗る“豊前うどん”。讃岐うどんや博多うどんにはない透明感や瑞々しい弾力を特長とし、近年、県外にも店舗を増やしている。この豊前うどんを出す店が加盟する団体が「豊前裏打会」。その発起人である「津田屋官兵衛」のご主人・横山和弘さんに話を伺った。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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豊前うどんを提唱する「豊前裏打会」の総本山へ!

福岡・北九州を拠点に佐賀、大阪、そして東京と進出を続ける“豊前うどん”。豊前うどんを提供するのは、現在、28軒が名を連ねる「豊前裏打会」という団体だが、その発足の背景は意外と知られていない。そこで生みの親「津田屋官兵衛」を訪ね、北九州・小倉へ向かった。

\取材するのはこの人!/

井上こん

井上こん

ライター

発足のきっかけはニセモノの出現!?

北九州市小倉南区にある「津田屋官兵衛」ご主人・横山和弘さん。トレードマークは白髭。黄色の暖簾に描かれているデザインは、プロレスラーの故・三沢光晴氏が指で額の汗をぬぐう“汗ワイパー”がモチーフだ
ライター井上
ライター井上
「今日はよろしくお願いします。豊前裏打会が発足した経緯から聞かせてください」
横山さん
横山さん
「元はといえば20数年前かな。ある日、うちで修業した人が店をオープンしたらしいぞと耳にしたんです。でもね、僕に当時弟子なんていなかったの(笑)。大真面目に『オヤジ、弟子取ってたんだ?』なんて聞くお客さんもいたから、気になって食べに行ったら冷凍麺なんか出してて。しばらくして今度は、懇意にしていたうどん店で修業したとウソを言いふらす店も現れ、この界隈でそんな話がちらほら出始めたんです。そこで一度整理しようと僕、『麺之介』、『うどんの紀元』、『うどんの小町』のキャリア20年組の4軒で『豊前裏打会』を発足することに」
ライター井上
ライター井上
「なるほど! 弟子を騙る人が増え始めたのがきっかけでしたか。“裏打”という言葉には『讃岐を表として自分たちはその裏を行く』という意味があるんですよね」
横山さん
横山さん
讃岐が正統派ならウチらは奇想天外なやり方だし裏でいいか、と。小麦粉レベルで研究して、製粉会社のサンプルを片っ端から試して……理想の豊前うどんの形にたどり着くまで2年はかかりましたね。でも今みたいになるとは思っていませんでしたね。当時は仲間内で『絶対日の目は見んね~』なんて言ってたくらいで」
ライター井上
ライター井上
「それが今では大阪や東京にも進出して全部で28軒に。ただ、横山さんご自身はお弟子さんを取ることに積極的ではないとか?」
横山さん
横山さん
「う~ん、弟子希望の人にはめちゃめちゃキツイぞと何度も説明しますね。過去には『休憩時間に銀行へ行ってきます』と言ってそのまま帰ってこなかった人もいるくらい。修業すれば必ずうどん屋になれるわけじゃない。家族がいる人には、まず奥さんの了承を取ってもらう。うどんでその人の一生を棒に振らせちゃいけないという使命感があるんです。だから『覚悟を聞かせてくれや』と言う。赤字が続いたらスパッと辞めるのか。もしくは、閉店後どこかに働きに行くなりして店を続けるのか。そういう話もしますけれど、骨のある人は2~3回断ってもめげずに来ますね」
ライター井上
ライター井上
「なるほど、それで各店の大将はみなさますごく芯があるというか、気合がみなぎっているというか」
横山さん
横山さん
1人育てるのに1年以上かかりますね。でも僕は人に任せられないタイプで、最後まで麺に触らせない。そういう意味では、『大地のうどん』が僕の代わりをしてくれています。ちゃんと人を育てて、5店舗にまで成長したでしょう。『麺之介』も佐賀や大阪にも進出して一つのグループになっている。これは僕にはできないこと」
「自分で思い切りやって失敗するのはいいけれど、人に任せて失敗するのがイヤなんです」と横山さん

無頼派の強み! 師匠がいないのが功を奏した

ライター井上
ライター井上
豊前うどんでは粉やダシの素材は決まっていますが、それらの使い方はお店の自由ですよね。これまで取材させていただいた中で、セオリーからみると熟成の仕方が特殊だなぁという印象があります」
横山さん
横山さん
「でしょう。本来、うどんの熟成って常温下で、6時間ほどでできるのですが、我々は長時間×高温スタイル。店によってやり方は多少異なるけど。僕は素人の状態でうどん屋を始めたんですが、これまで生地を電子レンジで温めたり、蒸したり、そんなことできんやろと言われることにどんどん挑戦してこれたのを思うと、師匠がいなくて逆によかったのかもね」
ライター井上
ライター井上
「こう言っちゃなんですけど、無頼派の強みというか」
横山さん
横山さん
「そうそう(笑)。僕がそんなだからか、うちの連中も一歩間違えれば腐敗するギリギリまで攻めたり、それで失敗して店を開けられなかったり、毎日必死でウマいうどんを作ろうとしている。本当に厳しい道だけど、それでいてそれを愉しんでいるね」
豊前うどんといえば麺の透明感が特長。こちらは「大地のうどん」のざるうどん。透けた麺はテラリと輝き、口に含むと膨張するような躍動感をみせる
こちらは元祖「津田屋官兵衛」のごぼう天うどん520円。丼からはみ出るトルネード状の特大ごぼう天も豊前うどんの十八番だ
外はふわり、内はキュッ! やや中華麺に寄せた感動的な歯ざわりに夢中で啜らずにいられない

同じ目線で語るためにも生涯現役でいたい

ライター井上
ライター井上
「発起人として今の豊前裏打会をどうご覧になっていますか?」
横山さん
横山さん
「それぞれにライバル関係のようなものがあっていいなと思います。その都度、切磋琢磨する相手がいるというか。僕が現場に立ち続けているのも実はそういう理由で、よく『オヤジ、20数軒あるんだからもういいやろ』と言われるんだけど、これを言われるのすごくイヤなの。僕も生涯現役で同じ目線でいられるライバルでいたい。このうどんで十分やっていけるんだというところを僕自身が証明することに意味があると思っている。みんなに言い続けていることは、まずは家庭、家族をしっかり守り土台を固めようじゃないかと。そして大いに語り、大いに飲み明かそうじゃないかと。まあ、体育会系の集まりみたいなもんで(笑)」
ライター井上
ライター井上
「“漢”と書いてオトコ!的な雰囲気がいいなぁと思っています。横山さんご自身で今後考えていらっしゃることは?」
横山さん
横山さん
「将来的には、みんなのお店で1時間でも2時間でも立たせてもらいたいな。当時僕が理想とする麺は今どうなっているのか、それぞれの店でどう進化しているのか見てみたい。現場に立ってるとなかなかみんなに会えないから、『おおこう変えたのか、これもいいな』とか語り合いたいよね。それと、10席くらいの小さな規模で商売としてのボーダーは守った上で、とことん素材にこだわったうどんを1日50人くらいに出すなんてこともいつかやってみたいなとか、これからのことを考えるとワクワクしますね」

豊前裏打会とは、定められた中で理想の味を追求するお店の“集合体”のようなもの。メニューや麺、ダシに各店の個性が映し出されているからこそ面白い。

Yahoo!ロコ津田屋官兵衛
住所
北九州市小倉南区津田新町3-3-20

地図を見る

アクセス
下曽根駅[南口]から徒歩約17分
安部山公園駅[出口]から徒歩約36分
石田駅[出口1]から徒歩約50分
電話
093-475-7543
営業時間
[月~土]11:00~16:00(15:30L.O)※ ただし、日によっては15時前に麺が完売して店じまいすることもあるようです。
定休日
毎週日曜・第1月曜
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

チーズとむっちゅり麺の最高コンビを味わえる限定うどん「大地のうどん 福岡東店」

ということで、ここからはユニークなオリジナルうどんが食べられる注目の2軒を紹介しよう。

まずは、横山さんのインタビューでも登場し、現在、福岡と東京に6店舗を展開する「大地のうどん」。今回は、ちょっと変わりダネがあると噂の福岡東店へ。

昨夏オープン。JR和白駅から徒歩7分ほど、海の中道沿いに立つ大型店
元の内装を活かしたモダンな空間は従来の「大地のうどん」にはないタイプ

「大地のうどん」の中でもここでしか食べられないシーザーサラダぶっかけ650円。いやはやその大迫力のビジュアルたるや!

麺を覆うようにシーザーサラダ―と半熟卵が乗る。めんつゆ付き

そして、お店ごとに厚みや形状が多少異なるものの豊前系特有のダイナミックなごぼう天はここでも健在! 持ち上げるだけで腕がプルプルするなんて天ぷらなんて笑ってしまうが、これがやっつけ甲斐があるの何のって。

注文時にバラ20本のごぼう天にも変更可

まずはめんつゆをツツッと回しかける。巨大ごぼう天に箸を入れ、ザクザクと音と立てて崩壊する。続いて半熟卵を潰し、麺、チーズ、シーザードレッシング、一切合切を混ぜて啜る。みょ~ん、むっちゅん! これです、この麺なんです。細いのに伸びやかで、歯が吸い込まれるような心地いい弾力。このエロティックな食感が大好きで、これまで何度もざるうどんやごぼう天うどんで食べてきたけれど、こんなにチーズと合うなんて!

これからも意外な組み合わせで驚かせてくれそうだぞ、大地のうどん!

いい方向に予想を裏切られました。ありがとう!

大地のうどん 福岡東店

福岡県福岡市東区和白5-4-28
092-606-1234
11:00~16:00(LO.15:55)/17:00~21:00(L.O.20:55)
水休

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

スパイシーキーマカレーに箸が止まらない「練り込みうどん 権」

続いて向かったのは博多駅からバスへ乗り30分ほど、糟屋郡志免町の「練り込みうどん 権(ごん)」。

2006年オープン。須恵川と宇美川に挟まれる牧歌的なロケーション

人気のキーマカレーうどん750円。自称カレーオタクのご主人・吉村赫進(しん)さんも「コレしか食べない人もいる」と苦笑いする、ヘビーなファンを持つオリジナルメニューだ。たしかにこれは中毒性がある。ダシを含ませたもっちり麺に濃厚なキーマカレーが絡み、スパイシーな香りがじりじりと迫る。卵を溶かせば丼の中はいっそう表情に富み、ああもう箸が止まらない!

スパイスを下支えするのはセロリ、人参、玉ねぎ、トマトの野菜の甘み
白米付きとはさすが! 食いしん坊の気持ちをよくご存じでいらっしゃる。ということで、残ったカレーも美味しくいただきます!

おまけにもう一品。吉村さんが「コレも食べてみる?」と出してくれたのは、夏季限定の冷やかけうどん550円。実は筆者、かねてから豊前うどんは冷やかけに絶対合うと思っていた。ただ、うどんに少し詳しい方ならご存知、冷やかけは讃岐の文化ゆえその企みはなかなか叶わなかったのだ。そのため、この出合いには思わず小躍り! 「結構いいでしょう? こっちの人で冷かけを知っている人は少ないんだけど、食べた人はみんな気に入ってくれて。夏が終わっても『アレある?』って人も」(吉村さん)

夏季限定らしく、大根おろし、みょうが、シソと夏の定番トリオもそろい踏み。また来年!

練り込みうどん「権」

福岡県粕屋郡志免町大字南里34-3
092-935-1177
11:00~16:00/18:00~21:00(L.O.20:30)
木休

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

取材・文・撮影/井上こん

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