肉! 生姜! 黒いつゆ! 小倉に根付く“漆黒のうどん”とは

特集

いま、福岡のうどんが気になる!

2017/09/19

肉! 生姜! 黒いつゆ! 小倉に根付く“漆黒のうどん”とは

北九州は小倉、特に小倉南区には独自の肉うどん文化が存在する。ゴロゴロ乗る牛肉、大量の生姜、そして黒いつゆ――。うどん好きライターの井上こんがタイプの異なる3軒を訪ねた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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ゴロゴロの牛肉に黒いつゆ、たっぷりの生姜が基本!

福岡の奥深いうどん文化に触れる本特集。今回は、小倉南区を中心に根付くご当地うどん「小倉肉うどん」を紹介する。

\取材するのはこの人/

井上こん

井上こん

ライター


ライター井上
ライター井上
「小倉肉うどんは黒いつゆに醤油で炊いた牛肉を乗せ、これでもかというほど生姜を“ぶち込む”(あえてこう言いたい)のがお決まりです。肉うどんというジャンルには大阪の「かすうどん」もありますが、こちらは牛の小腸を揚げたモノ。小倉肉うどんは牛のスジやスネ、ほほ肉といった部位を炊いて使い、またつゆの色や生姜の量にも特徴があり全国的に珍しいうどんです」

そんな小倉肉うどんの生みの親といわれる「今浪」、早朝6時から営業する「めん処 たけや」、72歳のパワフル女将が営む「肉よも亭」の3軒を訪ねた。

1日500人が訪れる元祖店「今浪うどん」

「小倉肉うどん」を理解するには、まず原点を知るべきだろう。向かったのは、小倉南区北方にある「今浪うどん」。昭和45年創業、古い家屋を改装した素っ気ない店構え。入口横の小窓から湯気が立ち上る。地元のお客に混ざり、肉うどんを注文する。

午前9時ごろの店内の様子
自家製のぬか漬け大根と、ダシ用昆布をぬかで和えた無料の惣菜でうどんを待つ。この辺りでは一般的なサービスだ

ほどなくして運ばれてきた丼の堂々たる姿たるや! 麺を覆うように乗るゴロゴロのスジ肉、漆黒のつゆ、そして小倉肉うどんに命を吹き込む役目の“おろし生姜”。

肉肉うどん(小)750円。“元祖”の貫禄が漂う佇まいに生ツバごくり。生姜は好みで足せる

このうどんを考案したのは、ご主人・品川保博さんの母親だ。

ご主人
ご主人
「捨てられがちだった牛のスジやスネを醤油や酒と煮込んだものをうどんに乗せたモノが始まり。当時この辺にうどん屋なんて1軒もなかったよ」

イリコと昆布から引いたダシを濃口醤油でキリッと仕上げた黒いつゆも、炭鉱に製鉄所、働き者が多いこの地域で歓迎された。そして、たっぷりの生姜も肝。肉のクセを抑えるためにと入れ始めたのが、やはりパンチの強い味覚が好まれるのだろうか、次第に肉を喰うほど大量に入れる人が増えたそうだ。

ライター井上
ライター井上
「くぅ~、歯を押し返すような猛々しいスネ肉とパンチのあるつゆ……力がみなぎるようなコンビです!」
生姜効果で汗も吹き出す!
多いと1日500玉。持ち帰りのお客も多いため釜場は常にフル稼働
博多では定番のごぼう天も、用意はあるもののそう出ない。福岡県内における好みの違いがまた面白い
気風のいい語り口の品川さんは“イナセ”なんて言葉が合う。でも「今浪って苗字が嫌だったから(東京の)品川に改名したの」って話、ホント?

今浪うどん (いまなみうどん)

住所:福岡県北九州市小倉南区北方3-49-29
営業時間:8:30~15:00
定休日:水曜・第2第4木曜定休

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

競輪選手のパワーの源 “モーニングうどん”「めん処 たけや」

小倉肉うどんを出す店の中には早朝から営業するタイプも多い。小倉の中心地から8kmほど南下したところにある「めん処 たけや」も、早朝6時の開店から賑わう評判店。ご主人・竹中直樹さんは医薬品メーカーや広告代理店などを経て脱サラ。地元に戻り2002年、「めん処 たけ屋」をオープンした。

9時過ぎまでの3時間ほど、厨房は戦場と化す
鍋いっぱいに仕込まれたゴロゴロの肉
店の奥で麺をこしらえるご主人。打ちたてを信条とし、1日10回ほど打つ

〆ならまだしも朝っぱらからあんな黒いつゆのうどんなんて、と思う人もいるかもしれないが、これが意外とはまる。むしろあの目の覚めるようなつゆと大量の生姜のダブルパンチで頭が一瞬に冴える感覚を一度でも経験すれば、朝ごはん代わりにかっ込んでいく人の気持ちも分かるというものだ。そして、やっぱり生姜。

ご主人
ご主人
「この辺りでうどんに生姜を入れるのは普通だけど、うちはそれが異常に多くて原価が高いんよ」

聞けば、年間消費量はうどん粉を上回り、およそ1トン(!)にも上るとか。

卓上に置かれた生姜。中には器をひっくり返し、まるごと全部ぶち込む強者もいる
肉うどん(小・1玉)600円。肉に余計な甘みをつけないのがたけや流。醤油と酒だけで長時間煮込む

まず店の顔である肉がしびれるくらい旨い。やんちゃな見た目から想像できないほど柔らかく、口の中でホロホロとほどけていき、一つ、また一つと口に運んでしまう。クセのなさは、丁寧な仕込みの証だ。

ライター井上
ライター井上
「昆布といりこ、さばの風味を活かしたつゆに肉のエネルギッシュな旨味が溶けこみ、後追いするかのように生姜がジワジワ効いてきますね~!」
きりっとしたつゆと麺のしこしこ感もドンピシャで好み。モーニングうどんに開眼しそう
なるほど、麺は一度締めているのか。どおりでぷりっとした食感があるわけだ
余談だが小倉は競輪発祥の地。こちらの肉うどん目当てに、近くの競輪場から足を運ぶ選手も

めん処 たけや

住所:福岡県北九州市小倉南区八重洲町10-9TRIAL駐車場
電話番号:非公開
営業時間:朝6:00~麺売り切れ次第終了
定休日:月休

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

よもぎ香る! パワフル女将が打つユニーク麺「肉よも亭」

小倉肉うどんにはもう一つ、面白いところがある。普通、うどんといえば白いモノだが、“よもぎ”を練り込んだ緑色のうどんを出す店もあるのだ。最後に紹介するのは、そのよもぎ麺が食べられる「肉よも亭」。小倉北区泉台から門司区に移転して2年。門司港からさらに関門橋の方へ北上し、海沿いに建つ店を訪ねた。

広い厨房を駆け回る松田英子さん、御年72歳。「もうだめ。半月板も痛いし、坐骨神経痛だってあるし」と言葉は弱気だが、巨大な寸胴鍋を運ぶときなんて腕の筋肉がクッと浮かび上がりカッコイイ

ほれぼれするほど機敏な動きを見せる英子さん。うどん職人になる前はデパートでアクセサリーの販売員をしていたが、ひょんなことから7年前にうどんの道へ。

よもぎ(小)600円に肉200円をトッピング

毎朝工場で打つよもぎ麺はやや青味がかった緑色で、吸い込まれそうなほど美しい。小倉肉うどんとしては薄い色のつゆの中でキラキラと輝いている。

英子さん
英子さん
「ふふ、優しい味が好きなのよ。隠し味にしいたけのダシをちょびっとね」

他、3種類のカツオ節、イリコ、昆布を使い、角のない大らかな印象に仕上げている。肉もダシの柔らかなテイストに合わせ、国産牛のほほ肉を丹念に洗い、湯がいて臭みを取り、生姜や醤油、玉ネギと一緒に柔らかくなるまで炊いたモノ。このほほ肉が、身もだえるするほどふわトロでして!

ぷるんとのど越しの良いよもぎ麺の旨いこと! 和を感じさせる青くさい香りがどうにもクセになる
生姜はお客がすりおろすシステム。「香りも色も新鮮な方がいいじゃない」と英子さん
入口すぐのところに無料の漬物が6種類用意されている
店の窓からも海を見渡せる最高のロケーションに建つ
ライター井上
ライター井上
「小倉肉うどんというとガテン系なイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、こんな女性らしい小倉肉うどんもあるということを教えてくれるお店です」

肉よも亭

住所:福岡県北九州市門司区旧門司1-5-17
電話番号:093-342-8208
営業時間:11:00~19:30
定休日:月曜(祝日の場合は通常営業)

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

\取材メモ/

“黒いうどんつゆ”といえば江戸の十八番、と思いきや、九州の最北端でも古くから親しまれていたんです。早朝のお店には、出勤前のお父さん、小さな子どもを連れた家族、飲み明かした呑兵衛など、ちょっぴりカオスな光景が広がっているかもしれません。


取材・文/井上こん
撮影/姉川友香

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