福岡を拠点に活躍するヌードルライター・山田祐一郎さん。製麺所を実家に持ち、あらゆる麺類を愛する麺のスペシャリストだ。特に、うどん愛は格別! 今回は、そんな彼に聞いた「本当は教えたくない絶品うどん店」を巡ってみよう!
Yahoo!ライフマガジン編集部
膨大な数から「教えたくない3軒」を厳選!
福岡には一体どれほどうどん店があるのだろう。タウンページから算出されたデータによると、現在、福岡にあるうどん店は1200軒前後といわれている。さぁ、福岡のうどんを見つめ続けてきたスペシャリストは一体どんなお店を薦めてくれるのだろうか?
\お薦めしてくれたのはこの人!/
山田祐一郎さん
ヌードルライター
ごまの波状攻撃にクラクラ!「杵むら」
まず山田さんが薦めてくれたお店があるのは、中央区薬院。地下鉄薬院大通駅から徒歩2分、無機質なコンクリートと木々が一体化した不思議なビル2階の「杵むら」を訪れた。
現在のご主人・中山雅弘さんは「ものづくりがしたい」と脱サラ、お気に入りだった「杵むら」の門戸を叩き、時を経て2代目となる。今年19年目を迎える「杵むら」の一番人気が、山田さんもほれ込む「ごま味噌うどん」だ。
- 山田さん
- 山田さん
- 「ごまの香りがふわりと立ち上り、目の前に丼が置かれた瞬間に食欲を刺激されます!」
波のように押し寄せるごまの香り。そして味わいもそれに負けないくらい濃厚で力強いときた。もう一口、また一口と飲み進めたくなるのは、隠し味に使っている甘みの強い自家製白味噌がいい仕事をしているのだろうか。
- 山田さん
- 山田さん
- 「そうなんです。この味噌がとてもまろやかで。また、味噌の風味の中にもしっかりと出汁が生きたつゆが秀逸です」
- 山田さん
- 山田さん
- 「そして、トッピングのつくねのコリっとした食感がアクセントになっているのもポイントです」
ぷりりっと弾力があり、またシイタケ、ごぼう、レンコンなどさまざま具材が使われたつくねは、コレだけで一つの料理として成り立つくらいハイレベルだ。
- 山田さん
- 山田さん
- 「丼のセレクト、そして内装と空間全体がセンス抜群で、そんな空気感がうどんを一層おいしく感じさせる名店です」
ふわふわ卵に包まれて「うどん処 松島」
続いてやってきたのは、うどん激戦区・赤坂。
- 山田さん
- 山田さん
- 「ご紹介するのは、地下鉄赤坂駅近くの路地裏に佇む隠れた名店です。夫婦が二人三脚で営むお店で、麺は手打ち、手切りを信条とされています」
- 山田さん
- 山田さん
- 「僕のおすすめはとじごぼう。常連さんにおなじみの裏メニューで、卵とじうどんにごぼう天をトッピングした一杯です。出汁を加えて仕上げた熱々のとき卵をごぼう天にかけて出すことで、ごぼう天の風味が息を吹き返したかのように引き立つんです!」
メレンゲのような卵をそおっと口に含むやダシが溢れ出し、穏やかな仕上がりに全身からみるみる力が抜けていく。反対に麺は主張タイプ。粉は熊本産中心。いわゆる博多で好まれる柔らかい麺ではなく、1本ずつ口に運び、むちっとした押し返しを丁寧に味わわせる。グリンとよじれていたり、厚みも太さも不揃いだったり、不思議なドライブ感にもう虜だ。
「学生時代に博多さぬきの店でうどんの基本を覚えた。今はもうオレ流やけんね。ごぼう天の卵とじも博多にはない。ぜ~んぶ自分の感覚ったい」とご主人。
福岡の定番、〇〇に特化した唯一の店「万平うどん」
最後に訪れたのは昨年末、城南区七隈から博多区東那珂にあるショッピングモール・フォレオ博多に移転した「万平うどん」。
- 山田さん
- 山田さん
- 「こちらは福岡唯一の丸天専門店です。 もともと和食の料理人だった店主が開業しただけあり、まずつゆが抜群にいい。塩を使わず、昆布やカツオ節によってとった出汁、そして醤油本来の味によってつゆを豊かな味わいに仕上げています」
ふたりの息子さんと店を営む平井秀一さん。18歳から和食の料理人として30年働き、うどん屋に転身。「和食は幅が広いですが、突き詰めるとダシの話になる。であれば、大好きなうどんと和食時代に得意としていたすり身の専門店で勝負してみようと思いました」と平井さん。
- 山田さん
- 山田さん
- 「こちらはすべての丸天を揚げたてで出してくれるのが嬉しいです。 特に山芋の丸天はふっくら感がすごい。エアリーで口に入れた瞬間、幸せな気分になります」
この山芋丸天、ファーストタッチはふんわり優しく、とろけるように甘みを残して消えていき、もう笑ってしまうくらいステキ。また、他にはベーコン、チーズなど丸天メニューが常時10種類。さらに毎月一つ、春なら「菜の花とワカメ」「ヒジキと筍」、冬なら「レンコンと柚子皮」といった旬を意識した限定品がメニューに仲間入りする。二度と同じメニューが出ることはないというから、足を運ぶ楽しみも増えるというものだ。
- 山田さん
- 山田さん
- 「麺にも注目してください。筑紫郡の名店『ほり野』直伝で、やわらかい中にコシがあり、とても満足度が高いですよ!」
やはり和食のプロが作るだけあって、ダシのバランスが桁違い。カツオ節に昆布、雑節、しいたけ、隠し味のザラメ……ふくよかな旨みに丸天のコクが交錯する。
ごま味噌に、とじごぼう、丸天専門……福岡には数多のうどん店があるが、その中でも個性的な面々(麺々)をご紹介いただいた。ベーシックな博多うどんはもう押さえてあるという人は、これを参考に福岡うどんのセカンドステージに進んでみよう。
取材・文・写真/井上こん