定番の「ビーフ」だけでなく、「チキンカレー」や「タイカレー」を具材にしたものなど。バリエーションが豊富になっている、カレーパンの世界。カレー大好き、ホフディランの小宮山雄飛さんが、美味しいカレーパンと出会う、楽しむための極意を、日本カレーパン協会会長・佐藤絵里さんにたずねてみた。
Yahoo!ライフマガジン編集部
芸能界屈指のカレーマニアが協会会長と紐解く、カレーパンの魅力
こちらの2人に対談していただきました
佐藤絵里さん
日本カレーパン協会会長
小宮山雄飛さん
出会っておきたい、カレーパン3選!
1.「パティスリーSATSUKI」の「シュリンプカレーパン」
2. 「築地木村家」の「牛すじ玉ねぎカレーパン」
3.「グッドラックカリー」の「カリーパン」
こちらにお邪魔してきました!
ホテルニューオータニ「パティスリーSATSUKI」
ここに注目!
1.多様化するカレーパンの世界
2.美味しいカレーパンに出会うためには?
3.佐藤さんオススメ!「シュリンプカレーパン」の登場!
4.街のパン屋さんのカレーパンも、続々進化中!
5.カレー屋がつくるカレーパンの可能性
【さいごに】これからのカレーパンと、カレーパン博覧会の話
1.多様化するカレーパンの世界
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「佐藤さんは毎日、カレーパンを食べておられると伺いました。対談冒頭からこんな質問をするのもなんなのですが、飽きることはないんですか?(笑)」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「この10年間、毎日カレーパンを食べていますが、全く飽きません。むしろ愛情が増すばかりです。普段は朝食の時だけですが、夏はお店のカレーパンの種類が増えるので、夕食もカレーパンです(笑)」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「僕もカレーは大好きで、レシピ本も出版させていただいているんですが、実はカレーパンを食べる習慣はなくて。佐藤さんは、どのあたりに魅力を感じておられるのですか?」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「世界中で愛されている「カレー」と「パン」を融合した食べ物だからです。しかも日本がルーツの食文化で、表現もさまざま。ビーフカレーがベーシックですが、他にキーマカレー、最近はバターチキンカレーやグリーンカレーを具材(フィリング)にしているものもあります」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「僕が子供の頃によく食べていたのは『サンジェルマン』のカレーパンでした。日本の家庭的なカレーが入った、食べやすい味わいで。なるほど、日本で多様なカレーが食べられるようになったように、カレーパンもまたバラエティ豊かになっているんですね」
2.美味しいカレーパンに出会うためには?
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「佐藤さんは初めて訪れた店で、陳列されているカレーパンが美味しいかどうか判断する際、どこに着目していますか?」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「揚げたカレーパンなら、サクッと揚げられているか。焼くタイプだと、ふっくらこんがりと焼きあがっているかを確認します。あとは商品が綺麗に整列されているか。これも意外と重要なんです」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「カレー屋だと店内に漂っている香りなどで、どんなカレーを出すか判断できるときもありますが。カレーパンからは、あまりカレーの匂いは立たないですし、割いて確認するわけにも、いきませんよね(笑)。そうやって見つけたカレーパンを、より美味しく食べる方法はありますか?」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「最近では常温でも美味しいものがありますが、やはり揚げたて(カレーパンは衣を付けてあげるものが多いので)の状態が理想です。ご家庭で食べる場合は、もちもちとしたパン生地のものは電子レンジで温めたほうがいいですが、揚げたもの、硬いパン生地のものは、霧吹きで水を吹きかけ、オーブントースターで温めた方がいいです」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「たとえば冷凍室で保存しても、後日、美味しくいただけるものでしょうか?」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「購入してすぐ冷凍すれば、1ヶ月ほどは日持ちします。私もよく、お気に入りのカレーパンをたくさん買って、冷凍庫で保存しますよ」
3.佐藤さんオススメ!「シュリンプカレーパン」の登場!
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「話に夢中になっていたら、カレーパンが運ばれてきました。こちら『パティスリーSATSUKI』さんのシュリンプカレーパンは、揚げパンタイプ。最近はヘルシー志向で焼きカレーパンも主流ですが、こちらは健康オイルを使っておられるので、さっぱりとした食後感です。魅力は何といっても、大ぶりのエビがたっぷり入っていることですね」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「このカレーパン、1個で700円もするんですか? 僕、そんな高価なカレーパンをいただくの、初めてです(笑)。ちょっとドキドキしちゃいますね」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「うん、素晴らしい! まず生地からしっかりカレーの味がする。そのあと具材から、心地いい辛さも。エビもぷりぷりでいいですね。ホテルというと欧風カレーのイメージが強いのですが、これはスパイシーに仕上げられています」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「煮詰めたトマトの酸味と甘み、おろし生姜がアクセントになっているレストラン『SATSUKI』の人気メニュー、『シュリンプカレー』をフィリングにしているそうです。エビを使ったカレーパンって、意外と販売されてないので、貴重な存在です」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「今までカレーパンというと、どうしてもスナック感覚が拭えなかったのですが、これはきちんと正座して、向き合って食べたいカレーパンですね。カレーもパンもしっかりした味わいで、そのうえ、具材も豪華。高級カレーパンというジャンルが、これから流行るんじゃないかと思えるくらいの美味しさです」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「実は「『パティスリーSATSUKI』さんには、1個1500円(税抜)の『プレミアム・ビーフ・カレーパン』もあります。ホテルの人気メニュー『銀座ビーフカレー』をそのまま包み込んだ『ビーフカレーパン』(629円・税抜)の3倍量の具を詰め込み、生地にはホテルオリジナルブレンドの八穀米『Jシリアル』パウダーを混ぜ込んでいます。フィリングのボリュームに圧巻されますが、生地から感じるほのかな甘みもいいんです」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「1500円のカレーパン! でもその内容だと、納得の価格設定ですね。高品質なカレーパンの登場で、ますますカレーパン業界が盛り上がっていきそうですね」
4.街のパン屋さんのカレーパンも、続々進化中!
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「でも、昔からある街のパン屋さんも、まだまだ頑張っておられます。たとえば『銀座木村家』さんから暖簾分けされた、『築地木村家』さん。あんぱんと同じくらい人気なのが、カレーパンです。従来は揚げカレーパンのみでしたが、2017年夏、焼きカレーパンも登場しました。牛すじの旨味と玉ねぎの甘みがたっぷりにじむ、丁寧に作られたカレーフィリングが秀逸なんです」
「銀座木村家」から暖簾分けを許され、「築地木村家」が開業したのが明治43年(1910年)。現社長の内田秀司さんで4代目だ。以来、看板商品は「あんぱん」だったが、3年前、ひょんなことで大量のカレー粉を引き取ることになって、始めたのが「カレーパン」。「そこにカレー粉があったから」と内田さんは当時を振り返る。今ではクミンをラードで煎って、ターメリックなどのスパイスを加え、自家製カレーフィリングを作成。「東京プリンスホテル」で洋食の修行を積んだ内田さんの醸す味わいは、欧風カレーがベースになっている。
肉は国産牛のバラとスジを使用するが、「あまり掃除しすぎず、適度に肉がついた贅沢なスジを選んでいます」。ビーフの旨味を引き立てるブイヨンも、冷ました際に鍋の上に浮く脂(ヘッド)を取り除き、クリアな味わいにしてから使用する。「これらを製餡機でコトコト火入れし、一晩冷蔵庫に寝かして、やっと完成です」。まさか製餡機が、このカレーフィリングの濃縮された美味しさを生んでいようとは。2017年夏には、焼きカレーパンも登場。こちらにはサワークリームをプラスし、酸味を立たせている。
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「なるほど、街のパン屋さんのカレーパンもまだまだ健在、というか進化中というわけですね。実はカレーの世界でも、インドやタイを一巡して、逆にジャガイモ、ニンジン、玉ねぎの入った、いわゆる日本の家庭的なカレーが再認識され始めているんです。日本生まれのカレーパンに、こうした昔からあるパン屋さんが着目するというのは、必然的なのかもしれません」
5.カレー屋がつくるカレーパンの可能性
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「佐藤さんとお話しているうちに、僕もおすすめしたいカレーパンを思い出しました。恵比寿にある『グッドラックカリー』のカレーパンです。代官山の人気ビストロ『Ata(アタ)』がプロデュースするカレー店が2017年5月にオープンしたのですが、お店で提供している、オマール海老からスープを取って作ったカレーをフィリングにして、カレーパンにしています。やっぱりカレーにこだわりがある、美味しいから、パンにしても素晴らしいんですよ」
渋谷駅と恵比寿駅のちょうど中間地点。明治通り沿いの東三丁目交差点近く、小道沿いのビル2階に2017年5月にオープンした、こちらのお店。代官山にあるビストロ「Ata」がプロデュースするだけあって、スペシャリテは「エビカリー」だ。「Ata」の看板メニューであり、人気が高い「オマール海老のロースト」。こちらのエビカリーは、そのオマール海老の殻でとった、濃厚なビスクソースをベースにしたものだ。それをさらに煮詰めてフィリングにし、パン生地で包んで揚げたら「カリーパン」の完成。
「『カレーパンって円型で食べづらい』と思っていたので、あえて細長い形にしてみました」と店長の菅原さん。確かにこれだと、片手で口まで持っていける手軽さだ。生地を噛みしめれば、オマールの旨味を湛えたエビカリーが、どっと溢れ出す。トマトの酸味に続いて、香るコリアンダー。海老のむき身も一緒に頬張れば、これぞ口福の瞬間だ。店内では2種のカレーを日替わりで出すが(800円)、いずれもサラサラとした南インド系。これにターメリックライスと、たっぷりの野菜もつく。なおカリーパンの販売は毎日14時から。テイクアウトが基本だ。
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「以前からカレー屋さんがカレーパンを作っていることはありましたが、それほどメジャーではなかった。カレーに詳しい小宮山さんの目から見て、今後、この現象は広がっていきそうですか?」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「増えていくと思います。カレー屋は、原材料が上がったからといって、カレー自体の値段を上げることは難しい。1000円を超えると『高いな』と思われちゃいますから。けれどカレーパンならテイクアウト商品として展開できるので、新たな売上にもなる。何よりカレー屋がカレーパンを販売することで、より美味しいカレーが身近になることが嬉しいですね」
【さいごに】これからのカレーパンと、カレーパン博覧会の話
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「これからのカレーパン業界の展望は、どのようなものでしょうか?」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「最近は、健康志向で焼きカレーパンが人気です。揚げるタイプと違って、形をアレンジしやすいので、キューブ型など、様々な外見のカレーパンが登場しています。あとは、コラボ商品。9月29日〜10月1日まで、西武池袋本店で開催する『カレーパン博覧会2017』では「いなば食品」さんのタイカレーとコラボしたカレーパンなどが販売されます」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「なるほど、そうすると僕も、カレーパンのフィリングだけ考案して、知人のパン屋さんなどに焼いてもらえばいいわけですね」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「そうです。完成したら、ぜひ『カレーパン博覧会』に参加してください。ちなみに前回2016年は1日のみの開催でしたが、オープンして1時間以内に売り切れてしまったんです」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「わっ、それはすごいですね! いやぁ、本気で出店しようか悩んじゃいますね(笑)。ちなみに、参加締め切りはいつまでですか?」
- 佐藤さん
- 佐藤さん
- 「それが。残念ながら、今年はもう、締め切ってしまいました」
- 小宮山さん
- 小宮山さん
- 「うわーっ、残念です(苦笑)。でも次の開催までに、本気でカレーパンに合うカレーを考えてみようかと思います」
150種類、3万個のカレーパンが集結!『カレーパン博覧会2017』の情報はこちらから。
取材メモ/「日本カレーパン協会」会長の佐藤絵里さんのカレーパンの話に、興味津々だった小宮山雄飛さん。これは、雄飛さんオリジナルのカレーパン発表の日も近い!? そうなったら、嬉しいな。
取材・文/岡野孝次 撮影/原 幹和