熊本の奥の奥。湯治場が残る温泉地、杖立温泉/熊本

熊本の奥の奥。湯治場が残る温泉地、杖立温泉/熊本

2017/11/17

約20の源泉があり、湯煙があちらこちらから上がる「THE温泉地」の風情たっぷり。熊本県阿蘇郡小国(おぐに)町の端っこにあり、静かな時間が流れ、情緒が残る「湯治宿」に潜入レポート。女将1人でゆったり営む「新ひたや」には、良泉と古き良き歴史が待っていた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

昭和の風情漂う、時間が止まった温泉地「杖立温泉」

映画『男はつらいよ』ゆかりの温泉地として、今なお足を運ぶファンがいるのも納得の「昭和感」。まさに、時間が止まっているような錯覚さえ覚える場所が杖立温泉郷。各所から立ち上る湯煙は、源泉温度の高さを物語り、それが「蒸し場」の活用につながっているとのこと。

そもそも「蒸し場」とは? これは、温泉の蒸気を利用して蒸し料理ができるスペースのことで、食材を持ち込めば簡単に蒸し料理が出来るようにセイロが用意されています。杖立温泉には、こんな風に無料で使える「蒸し場」が4つあります。

湯上がりには路地裏を散策し、その途中に「蒸し場」で好きな食材を蒸す……。ここでは、時計を外して過ごしてほしい、まさに、時を忘れさせる場所なんです。

「杖立温泉」に到着!
ライター今村
ライター今村
「温泉をこよなく愛するタウン誌編集者・今村ゆきこです。熊本のタウン誌『タウン情報クマモト(タンクマ)』の編集者として、熊本第一号温泉ソムリエとして、熊本の魅力を雑誌やSNSを通して発信しています」

ノスタルジックな温泉地で、今も残る「湯治」をプチ体験!

明治44年創業の「湯治旅館 新ひたや」。日帰り入浴は、1人500円

中央に大きな川が流れる杖立温泉。実はここ、「鯉のぼり祭り」発祥の場所としても有名で、毎年、杖立川に3000匹以上の鯉のぼりがかけられ、悠々と大空を泳ぎます。その景色は圧巻で、一生のうちで一度は訪れてほしい場所。熊本の誇りです。

その一方で、鯉のぼりが泳いでいない時期には、静かな時間が流れる温泉地に。すれ違う人も少なく、温泉は「貸し切り状態」になることも多い、まさに「隠れ家」。「日々の騒がしさから逃れて、リラックスしたい!」。そんな人にピッタリな場所です。
温泉地の共同駐車場に車を停め、橋を渡ると、今回の目的地「新ひたや」にたどり着きます。2階建の小さな宿で、1日3組限定。女将さんが1人で切り盛りしているため、扉を開けて「こんにちは~」と声をかけてから、しばらく待ちましょう。慌てず慌てず……です。

利用者が自由に使える休憩所。まるで田舎のお婆ちゃんちのような居心地の良さに、長居する人も多いとか
ライター今村
ライター今村
「古い格子のデザインや、ガラス扉に書かれた宿の名前。湯治宿という名にふさわしく、昭和に建てられたままの姿で迎えてくれました。『昭和好き』にはたまらないビジュアルに次々と出会えます。そして、扉を開けると漂ってくる温泉の匂いもたまりません! 『ここの温泉成分は濃い!』と直感的に感じさせてくれる匂い。今すぐ温泉に入りたい! という気持ちを抑えながら、ゆっくりと奥から出てくる女将さんを待ちました(笑)」
3代目として宿を守る女将。名前は「恥ずかしいから」とナイショです
女将さん
女将さん
「いらっしゃいませ。何もないところだけど、ゆっくりしていってね」
ライター今村
ライター今村
「ありがとうございます! 温泉の匂いがすごいんですね!」
女将さん
女将さん
「良い温泉だって言ってもらえるんですよ。宿自体は、1人でやっているから大したもてなしはできないので、『自分たちで思い思いに楽しんでいってください』という感じ」
ライター今村
ライター今村
「それで、休憩所も自由に使えるように開放しているんですね。そちらも気になりますが、さっそく温泉に入らせてもらっても良いですか?」
女将さん
女将さん
「もちろん。どうぞ、奥になります……」

◆扉を開けると階段が! 
まさかの半地下に温泉が待っていた

タイル張りの浴室の女湯は、これまた昭和。小さな湯船なので3人ほどでいっぱいに
源泉温度98.6℃と熱いため加水してほど良い湯加減に。泉質は「アルカリ性ナトリウム塩化物泉」で、肌がツルツルになると評判だそうです
杖立温泉の宿のほとんどで体験できる「蒸し湯」
ライター今村
ライター今村
「まずは、その趣きに感動です。小さなお風呂ですが、家庭や新しい施設では味わえない古き良き雰囲気。タイルのデザインや高い天井、男湯と女湯は上がつながっているので、家族で会話することもできます。お湯は無色透明ですが、肌を包み込んでくれる優しい泉質なのもうれしいポイント。さらに注目は『蒸し湯』。蒸気を利用してサウナのような感覚で利用すれば、頭皮までツヤツヤになるとか。トリートメントをした髪をタオルで巻いて入れば、髪もツヤツヤになるという『プチ湯治』を観光協会がおすすめしています。『湯治』と言えば、長期滞在が主流ですが、杖立温泉のように『日帰り』でも、温泉と蒸し場の両方を時間をかけて楽しめば、全身にうれしい時間になるはずです」
「杖立音頭」「杖立ブルース」など、女将さんがコレクションしているレコードの数々
リクエストすれば聴かせてくれます
各温泉宿で開発した杖立プリン「からいもプリン」は1個300円

▼温泉DATA 湯治旅館 新ひたや▼
・泉質:アルカリ性ナトリウム塩化物泉
・効能:神経痛、筋肉痛、関節痛、冷え性、疲労回復、健康増進
・風呂の種類:2種
・源泉風呂:有り
・露天風呂:なし
・入浴料(税込):500円
・駐車場情報:有り ※共同駐車場

湯治旅館 新ひたや

住所:熊本県阿蘇郡小国町下城3397
電話:0967-48-0097
営業時間:【日帰り温泉】10:00~19:00
定休日:不定休

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

温泉の恩恵を受けまくる「蒸し場」体験で、おなかも満足!

◆無料で使える「蒸し場」で、Let’s蒸し料理

「蒸し場」は4カ所あり誰でも利用OK! 
1カゴ500円で食材を販売している「蒸し物自販機」。内容は季節によって異なります

宿の「蒸し湯」で全身ぬくぬくになったら、続いてチャレンジしてほしいのが、「蒸し場」で作る蒸し料理体験。温泉地と言えば、食事も観光地価格なことが多い中、ここは食材さえ買ってくれば無料。セイロが設置されているので、持ち込んだ食材を蒸して、これまた無料の足湯につかりながらお昼ご飯、ということもできてしまうんです。

手ぶらでもOKなように、「蒸し物自販機」で食材を購入できるのも面白いシステム。タマゴやサツマイモ、ジャガイモ……など、季節ごとにさまざまな食材がカゴの中に入っています。蒸している間に温泉に入ったり、散策したり。「そろそろおなかが空いたな」という時間に合わせて、上手に利用しましょう。

ジャガイモなど、約20分で蒸し上がるそうです
ホックホクのジャガイモ! タマネギも甘くて、とっても食べやすい!
ライター今村
ライター今村
「蒸すことでホックホクになり甘みが増したイモや、塩気を感じるタマゴは、まさにここならではの味わいです。『新ひたや』に泊まる人は、蒸し場を利用して食事を作ったりするそう。アイデア次第で何でも作ることができるんです。腕の見せ所ですね!」

取材メモ/1800年の歴史を持ち、昭和の名残を残す杖立温泉。「背戸屋(せどや)」とよばれる路地裏があったり、地元の人が入る町湯があったり、通えば通うほど「味が出る」温泉地です。温泉と蒸し湯でリラックスして、蒸し場で蒸したタマゴなどを食べておなかを満たして……温泉の恵みをこれでもかと堪能できる場所です。

取材・文・撮影=今村ゆきこ

月刊タウン情報クマモト

月刊タウン情報クマモト

毎月27日発行

1979年創刊のタウン誌。熊本県民のみなさんに“タンクマ”の愛称で親しまれ続けている『タウン情報クマモト』。グルメ、温泉、観光、人、音楽、ファッション、アートなど、熊本の“旬”が満載です。360円

この記事を書いたライター情報

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

グルメ、おでかけ、イベントなど、ライフスタイルを豊かにする情報を編集部が厳選して紹介します。

おすすめのコンテンツ

連載