涼しくなり始めた秋に見頃を迎えるコスモス。人気インスタグラマー・リルミーさんが農学修士の“コスモス博士”奥隆善さんに、コスモスを楽しむ方法を聞いてきました!
Yahoo!ライフマガジン編集部
\対談したのはコチラの2人/
コスモス博士の鑑賞術&インスタグラマーの撮影テク
2人が取材で訪れたのは、キバナコスモスが見頃を迎えた8月下旬の浜離宮恩賜庭園(東京)。キバナコスモスは9月中旬まで咲いており、以降はピンクや白のコスモスが見頃を迎える。都心でコスモスが見られる貴重な場所「浜離宮恩賜庭園」で、コスモス博士の奥隆善さんがインスタグラマーのリルミーさんにコスモスの楽しみ方をレクチャー。また、随所で語るリルミーさんの撮影テクも必見!
コスモス博士・奥隆善(たかよし)さん
千葉大学在籍時に研究を重ね、チョコレートコスモスの品種改良に成功した。キバナコスモスの交雑種育成は世界初。現在は三重県でチョコレートコスモスを栽培&出荷し、切花の出荷量では日本で有数のシェアを誇る。著書「コスモスの謎 色も香りもチョコそっくり⁉ チョコレートコスモス大研究」(誠文堂新光社、1620円)が発売中。
リルミーさん
モデルなどで活躍する人気インスタグラマー。ファッションやメイク以外にも、グルメなどのライフスタイルなどをインスタグラムやLINEオフィシャルブログで発信
取材で訪れたのは浜離宮恩賜庭園
コスモスってどんな花?
コスモスの鑑賞術を伺う前に、まずはコスモスがどういった花なのか、“コスモス博士”の奥隆善さんに聞きました。
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「秋の花と言えばコスモスというイメージがありますが、そもそもコスモスとはどんな花なのですか?」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「コスモスは日本全国で咲いていますが、原産地はメキシコです。メキシコでも日本と同じく秋に咲いていますよ」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「えー、そうなんですね。てっきり日本の花だと思っていました。私の中でコスモスと言えば、ピンクや紫のイメージが強かったのですが、浜離宮恩賜庭園では黄色のキバナコスモスが咲いていました。種類はどれぐらいあるんですか?」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「メキシコを中心に26種類程あるとされていますが、日本で一般的なのはピンク、紫系や白色の花を咲かせるコスモスと、黄色、オレンジ色の花を咲かせるキバナコスモスです。ピンク色のコスモスで最もよく見かける品種は『センセーション』で、その『センセーション』だけでも4、5色あり、ほかにも『ソナタ』、『ラディアンス』、『ベルサイユ』、『あかつき』、『サイケ』、『シーシェル』…」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「そんなにいっぱいあるんですね」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「今挙げたのはコスモスの品種で、キバナコスモスの品種は『サニー』、『ロード』、『ディアボロ』、『サンセット』、『オレンジフレア』、『タンゴ』などがあります。そして、少しややこしいですが、ピンク系が一般的なコスモスにも黄色系の品種が改良されて流通しているんです。『イエローガーデン』、『イエローキャンパス』、『オレンジキャンパス』がそれにあたります」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「品種が多くて正直びっくりです。浜離宮恩賜庭園で咲いているのも黄色のコスモスですね」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「これは『ディアボロ』という品種のキバナコスモスですね。キバナコスモスは本来、背が高くならないと咲かない品種でした。人間が品種改良して、背の低いキバナコスモスが生まれたんです。一番の特徴は暑くても元気なところです。ですから、暑い夏から秋の始まりにかけてよく見られますね。一方ピンク色のコスモスも夏に咲かせることはできるのですが、暑さが苦手なので秋に咲くように植えられることが多いです」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「ここのキバナコスモスは人の背丈ぐらいの花もありますが、20cmぐらいのものもあります。ただ、背が低くなるほど性質は弱くなりますので、栽培する側としては、場所に余裕があってたくさん花を咲かせたいなら背が高めだけど高すぎない『オレンジフレア』や『ディアボロ』なんかがオススメです。野性のキバナコスモスは、非常に背が高く、私がメキシコで見たものは、2mを優に超えていました」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「これは余談ですが、私の大学の先輩でもある植物学者の橋本昌幸さんは、それまで黄色とオレンジしかなかったキバナコスモスに朱色の品種を誕生させました。それは、品種改良のオリンピックと言われるAAS(オールアメリカセレクション)の品評会で金メダルに輝きました。この賞は大きな種苗(しゅびょう)会社がとることがほとんどで、そんな中、橋本さんが個人で開発して金メダルをとられたんです。これは後にも先にも彼だけです」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「コスモスという一つの種類でも、本来持っている特性があったり、品種改良されることで背の高い花、低い花など、いろいろあるんですね。次は“コスモス博士”ならではの視点で、鑑賞術を教えてください!」
行く前に知っておきたい3つのコスモス鑑賞術
1.いつも新発見があるコスモスの表情
2.見返り美人のコスモス
3.風景&背景も一緒に見る
1.いつも新発見があるコスモスの表情
見るたびに違うコスモスの変化を感じ取る
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「まず一つ目は、同じコスモス畑でも来るたびに表情が違うので、いろいろな表情を楽しんでほしいですね。簡単に言うと、秋の始まりと晩秋ではコスモスの表情が変わっていますから、その移り変わりを見ていただきたい。もっと言うと、1日単位でも違います。天候によって大きく開いていたり、閉じ気味だったり。前日と翌日で大きさや色が変化してくるんです。日の強さでも見え方が変わりますから、夕暮れ時なんか数時間で違う印象になりますね」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「(ふむふむ)。となると、コスモスが咲いている時期であればいつでも楽しめます。頻繁に来られない人は、夕方に来ればコスモスの表情の変化も感じ取れるかもですね」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「僕は幼い頃から生物に興味があったので、コスモス畑と言うより、近所で誰かが植えているコスモスをよく観察していました。例えば通学する時に、コスモスが咲き始めてから、枯れていくまでの様子を見るのが毎日の楽しみだったんです。だから『一面に咲くコスモス畑がきれい!」もいいんですけど、普段の日常の中で“マイコスモス”を見つけて『あ、芽が出てきた今年も』とか、そこから花が咲いて散るまでの何か月かを見守るというのも一つの楽しみ方だと思います」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「私の話になりますが、インスタグラムも日常を切り取った写真が一番いいと思っています。なので、いかにナチュラルに写るかを大事にして、光も加工は簡単にできるんですけど、なるべくその時の光を大事にしています。あと、『この器好き』『この食べ物好き』など、SNSは自分が好きなものがギュッと詰まった『私ってこういう人です』と伝えるものなので、作り過ぎず、でもおしゃれに、を心がけています」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「例えば写真をSNSにあげるなら、一つの花に注目して、花びらが開いた一番いい時だけでなく、経過を撮るのもおもしろいですね。秋は気候が変化していく時期ですから、花を撮ることで四季の移ろいも表現できると思います」
2.見返り美人のコスモス
角度を変えてコスモスを見る
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「二つ目は、コスモスは逆光で撮影するときれいに見えます」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「逆光ですか?」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「花を上から見るのではなく、下から見上げるように裏側から見るんです。花の写真って、中心をクローズアップして上から撮影しているのをよく見かけますが、花を育てている私の目線で言えば、雄しべと雌しべを正面から撮影しているのは、ちょっとグロテスクなんですよ」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「??? 花がグロテスク?」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「(少しかがんでコスモスを見上げる)後ろから見ると雄しべと雌しべが隠されて、“見返り美人”のコスモスが見られます。斜め下から見ると、立体感も出てきますし、光で透けた花びらがきれいなんです」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「いいですね、見返り美人。確かに撮影する時が逆光なら、花びらの裏側に陰影もついてイイ感じです」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「雄しべと雌しべは人間で言うと男と女。なにか性別の部分だけ見ているようで…。なので、裏側から見ることで雄しべと雌しべをオブラートに包み込み、コスモスの美しさが前面に出ると思うんです」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「その“コスモスウンチク”いただきます! 友達と一緒に見に行ったら自慢気に話しちゃいそう(笑)。裏側から見るっていうのは、専門家ならではの見方ですね」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「あとコスモスの形は、個人的におわん型に咲いているコスモスが好きですね。花びらが開き過ぎていないものですね。その形をキープしているのは時間的に半日か、もって一日ぐらいで、それを過ぎると花びらが開いてしまうんです」
3.風景&背景も一緒に見る
コスモスは背景とセットで鑑賞
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「最後は、その土地ならではの風景と一緒にコスモスを楽しんでほしいです。日本全国にコスモス畑はありますが、一つの花だけを見るとそこまで大差はありません。『きれいだから、顔を近づけて撮影したいな』という気持ちも分かるんですけど、それだけだと個性が出てこないので、背景などの風景も一緒に見てほしい。浜離宮恩賜庭園なら、都心ならではのビル群ですね」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「コスモス畑は広いし、ここにいるだけなら東京ではない感じがしますが、あたりを見回すとビルが見えます」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「海でも山でも何でもいいから背景と一緒に撮影すると雰囲気が出ますし、思い出にもなりますよね」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「普通はコスモス畑って、自然のイメージがありますけど、ビルと植物と言うのは新しい組み合わせだし、浜離宮恩賜庭園ならではの光景ですね。ビルの写真もあれば、コスモスと東京をミックスした感じが伝わると思います」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「私も写真を撮る時はその場の雰囲気を大事にしています。例えばあえてカメラ目線を外して、ベンチで友達としゃべったりすることで自然な感じに見えるし、楽しさも伝わると思うんです。『あ、こんな素敵なベンチがあるんだ。私も行ってみたい』など、私もSNSを見ていると同じ事を思うので」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「ちょっとマニアックすぎるかもしれませんが、ここになぜコスモスが植えてあるのかという裏側の物語も想像すると、もっと楽しいはず。当然ながら浜離宮恩賜庭園のコスモスは、どこからか種を仕入れて意図的に植えています。本来はメキシコにある野性のコスモスを人間が品種改良して、少し姿が変わったコスモスを僕たちは目の前で見ています。それを想像するだけでも、ちょっと見方が変わると思うんです」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「深い話ですね。物語風に楽しむということですね」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「そうですね。ここはビルが背景にあるので、例えば庭師さんがビルの背景のことまで考えて栽培しているのかなとか、作業している人のことまで考えると、目では見えない裏側の物語が見えてくると思います」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「今日は貴重なお話しをありがとうございました。最後に、浜離宮恩賜庭園のオススメのグルメを食べましょう」
\休憩タイム/
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「おいしい! 今日は暑かったので、冷たい抹茶のさっぱりした感じが体に染みます」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「もう少ししたら秋になるので、そうすれば汗だくにならずにコスモスを見られる季節になりますよ(笑)」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「ちなみにコスモスの見ごろは10月ごろですか?」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「場所によって多少変わりますが、10月初旬ぐらいですね」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「コスモスと言えば秋っていうイメージですよね。少し涼しくなって、やっぱり夕方あたりが雰囲気出そう。夕日があればフォトジェニックな写真が撮れそうですね」
- 奥隆善さん
- 奥隆善さん
- 「そうですね。夕暮れで赤くなって赤とんぼがとまっていると最高のシチュエーションですね。逆光でとんぼの羽がキラキラ輝いたりして」
- リルミーさん
- リルミーさん
- 「『夕焼け小焼け』の曲が聞こえてきそうですね(笑)」
浜離宮恩賜庭園のコスモス畑以外の立ち寄りスポットを紹介。
\お伝い橋と中島の御茶屋/
浜離宮恩賜庭園の見どころの一つが、潮入の池と岸を結ぶお伝い橋と中島の御茶屋。かつてはここから房総半島が見渡せたと言う。建物では抹茶を味わうことができ、テラス席でたしなむお茶も風情がある。
\三百年の松/
徳川家の六代将軍の家宣が庭園を改修した時に植えられたと言われている、都内最大級の黒松。「さきほど奥隆善さんから教わった通り、松も側面から覗いてみました。根の張り方がすごくて、それを見ると300年というのも納得です」(リルミーさん)。
実際にコスモスを見ながら、専門家の奥隆善さんに聞いた、3つのコスモス鑑賞術。近所に生えているコスモスの観察術など、コスモス畑に行かなくても、日常でコスモスを楽しむ方法も。今回はインスタグラマーとの対談ということもあり、背景と一緒にコスモスを撮るなど、撮影術も含めて語っていただきました。奥隆善さんの鑑賞術に、リルミーさんの撮影テクを合わせれば、コスモススポットへのお出かけは準備万端!
取材メモ/荘厳な門構え、海の潮の香り、趣のある建物や庭園、豊かな自然、そしてコスモス畑と、いろいろな楽しみ方が可能な浜離宮恩賜庭園。今回の取材で初めて訪れましたが、これだけ素敵な時間が過ごせるなら入園料300円も高くないと思います。
取材・文=嶌村優(エンターバンク)/撮影=菊池さとる
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