犬養裕美子のお墨付き! 今こそ行くべき、レストラン・キノシタ

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10月の連載記事まとめ

2017/10/27

犬養裕美子のお墨付き! 今こそ行くべき、レストラン・キノシタ

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第37回は参宮橋<レストラン・キノシタ>

Yahoo!ライフマガジン編集部

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前進を続けることこそ、「伝説の店」の実力

「レストラン・キノシタ」をこの連載で紹介するとは考えもしなかった。1996年末にオープン。わずか半年で大ブレイクし「予約の取れないフレンチ」として有名になる。

小田急線参宮橋駅より約6分、南新宿駅より約8分、JR代々木駅より約10分。2002年に現在の場所に移転

ところが、最近びっくりしたことがあった。「レストラン・キノシタ」を知らない20代の料理人がけっこういたのである。これではいけない! この店のように21年目を迎えるほど長く存続していると、新しいもの好きの雑誌やテレビで紹介される機会は少なくなるらしい。

店内は移転後10年で、30席から20席にして、ゆとりをもたせた
カウンター席ができて木下シェフとの距離も近くなった。20年来の常連の中には、フランス料理評論家をはじめマスコミ関係者も多い

しかし参宮橋と代々木の間という目立たない場所で、コツコツと手間暇かけた料理を出し続ける木下和彦という料理人が、どれだけフランス料理を愛し、素晴らしい皿を出し続けてきたことか。日本のフランス料理というものが身近なものになったのは、多くのグランシェフの功績にある。しかし、木下和彦シェフの存在と努力も大きく評価されるべきだと、私は思っている。

フランス料理のファンでいたい!
そんな熱烈な思いが原動力

木下シェフが料理人を志したのは30歳を過ぎてから。“一番好きなもの”を一生の仕事にしたいと考え、選んだのがフランス料理だった。
目標は「ラ・ブランシュ」田代和久シェフのような「心に響く料理」。田代氏の店に200回以上通ったという、すさまじいほどの思い入れが木下シェフの財産だ。
ちなみに前職はなんと「たこ焼き屋」! 調理師学校にも通わず、有名店での修業もせず、フランスにも行かず、いきなり町場のフレンチレストランに入って仕事を覚えていった。

木下シェフ。「はじめの頃は自分の料理がフランス料理なのか自信がなかった」というが、フランスから訪れるシェフや批評家からも高い評価を受けて自信を得る。最近は毎年のようにフランスへ行き、現地の味を吸収

私が木下シェフに初めて会ったのは、木下シェフが代々木上原のレストランでシェフを務めていた時だった。洋食とフレンチの間のようなその店は、安くておいしい。シェフは厨房の奥から目礼するだけで言葉を交わすこともなかった。
その寡黙なシェフが独立するというのでオープン初日に行ってみたら、店は初台のバス停前という落ち着けない場所。「こんなところに人が来るのだろうか?」と不安になった。

オープン時からずっと作り続けている名品「スープ・ド・ポワソン」。以前はマメアジを使い、内臓も濾(こ)した濃厚なものだったが、今や甲殻類のリッチな風味、それでいてサラサラのコンソメのよう

だからこそ木下シェフは思い切った作戦に出たのかもしれない。アミューズ、前菜、スープ、メイン、デザート、飲み物で3900円のプリフィクスディナーを打ち出したのだ。しかもこの値段にもかかわらずフォアグラ、トリュフ、キャビアなど高級食材も躊躇(ちゅうちょ)なく使う。原価50%以上というから、もうけはほとんどない。
しかし、この値段だからこそ、それまでフランス料理と縁のなかった若者や年配の夫婦、女性同志のグループなど、誰もが気兼ねなく訪れるようになった。

生ガキ2017。夜のプリフィクスの前菜。生カキは毎年、形を変えて出す冬の素材。北海道・昆布森のカキの下に玉ネギのムース。ムースの甘味がミネラル分たっぷりのカキのうまみをより引き立てる

そして、いつの間にか「予約の取れないフレンチ」と呼ばれるようになる。「あの当時は1年先まで予約で埋まっていて」と木下シェフ。それはまるでコンサートや舞台のチケットを買うのと同じ。1年先のその日を楽しみに過ごすのだろう。「キノシタを予約している」ということが“日々の励み”になる。そんなレストランはそれまでになかった。

今も常に進化し続けている。
「今が最もおいしい」のがスゴい

今年で21年目だが、値段はほとんど変わらない。夜でもMenuA・4000円がある(内容はお決まり)。MenuB・5300円がプリフィクスコース、MenuCはおまかせ、8000円。

メインの肉料理は、豚肩ロースのコンフィ、和牛の赤ワイン煮込み、鴨モモ肉のコンフィ、仔羊のロースト ジュのソース、その日のお肉とフォワグラのパイ包み焼きなどなど。「新しい料理を出したいんですが、それぞれに熱烈なファンがいるので、メニューからはずせない」のだそう。

おまかせ8000円ディナーの一品。名古屋コーチンモモ、ムネ、ササミに目玉焼き、トリュフ添え
今、シェフがお気に入りの素材・名古屋コーチンを味わいつくす一皿。リッチな仕上げだが、エレガントな食後感
マダムの北井文恵さん。ソムリエールとしてシェフを支える

以前ならボリュームがあって、濃厚な味の「ガッツリ系」が魅力だった。ところが驚くべきことに、今の木下シェフの料理は、エレガントな王道フレンチ。「料理で人を幸せにしたい」という言葉のとおり、どのテーブルにも笑顔があふれている。
現在は2カ月先まで予約可能。運が良ければその日に席を取れることもある。だからこそ、読者のみなさん、なんとしてでも行って欲しい。その日に行けたら、宝くじが当たったのと同じ!

「80歳まで現役で働きたい。それが料理人として自分が社会に貢献できる唯一のことだから」その思いを実現するためにシェフとマダムは今日も店に立ち、休みには食べ歩きで勉強する
Yahoo!ロコレストラン・キノシタ
住所
渋谷区代々木3-37-1 代々木エステートビル 1F

地図を見る

アクセス
参宮橋駅[出口]から徒歩約5分
南新宿駅[出口]から徒歩約8分
代々木駅[A1]から徒歩約9分
電話
03-3376-5336
営業時間
12:00~14:00(L.O.) 18:00~21:00(L.O.)
定休日
月曜日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

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