新大久保と並び、東京のコリアンタウンとして有名な東上野キムチ横丁。その歴史は、新大久保よりもずっと古く、都内最古と言われるほど。そんな韓国料理店があふれるこの街に根付くこと、60年あまり。親子・孫に渡り愛される老舗店「第一物産」で、奥深きキムチ道、そしてキムチレシピを学びます。
Yahoo!ライフマガジン編集部
東上野にやってきたよ
「パァ!出たぁ!」。大好きなますだおかだの岡田さんのギャグで登場いたしました、ライター船橋です(鬼独身・32歳・非リア充)。オールド コリアンタウンというべき東上野にあるキムチ屋「第一物産 上野本店」から失礼いたします。
なんでもここ東上野は、コリアンタウンとして有名な新大久保よりもその歴史は古く、戦前から戦後間もない頃に、焼肉店やキムチ店、民族衣装の店が集まったことによって発展していったと言います。だからこの東上野キムチ横丁には、“本物の味”が集結しているわけです。
なんて偉そうに語ってしまいましたが、この話を教えてくれたのは、1960年創業のここ「第一物産」の三代目・姜恵蘭(カンヘラン)さん。キムチソムリエとして料理教室などを行う、とってもキュートな社長さんです。
姜さんの笑顔につられるように、すぐさま店内へレッツらゴーします。
冷蔵庫には、キムチ、キムチ、キムチ、キムチ、キムチのオンパレード。この撮影のために朝食も昼食も抜いてきたので、見ているだけでもヨダレがじゅるり。
キムチは、量り売りからパック詰めのものまでズラリ。この日並んでいたのは、白菜やゴボウ、かぶ、セロリ、トマトベリーなど定番から珍しい面々まで。
しかも白菜キムチは、カブ売りの大迫力。こ、こ、こんなの見たことな~い!
これはもう一刻も食べたいやつです(ヨダレ、たら~り)。
- ライター船橋
- ライター船橋
- 「うっひょ~、大変です。入店して1分、興奮が止まらないです…!!!」
- 三代目・姜恵蘭さん
- 三代目・姜恵蘭さん
- 「ははは。ぜひ試食してみませんか? 食物繊維豊富で女性に人気のごぼうKimchiなんてどうでしょうか?」
- ライター船橋
- ライター船橋
- 「(もぐもぐもぐ)。ちょっと待ってください、なんですかこれは。辛みの中に甘みを感じられるし、食感も楽しい。初めての味や。うますぎて泣きそう。どうしてこんなにおいしいんですか?」
- 三代目・姜恵蘭さん
- 三代目・姜恵蘭さん
- 「そんなぁ。でもありがとうございます! うちのKimchiは、創業時と変わらずずっと手作りです。塩振りからキムチの素となるヤンニョムの塗り込みまで、全てキムチ職人の手で漬けています。原料にもこだわり、10数種類の原料の基本は国産ですが、とくに唐辛子粉は韓国の契約唐辛子農家まで1日がかりで視察に行き、納得できたものを使います。あと、ニンニクなのに臭いが気にならないカレーニンニクもおすすめです。さぁどうぞ!」
- ライター船橋
- ライター船橋
- 「え、ニンニクですか。この後たくさんしゃべるんですけど…って、マジうまい!!! 全然匂わないし、ほんのりカレー味。ウソでしょ、これ。もしかして夢なんじゃないかな…?」
- 三代目・姜恵蘭さん
- 三代目・姜恵蘭さん
- 「現実ですよ(にっこり)。でも、うちのKimchi、おいしいですよね。作っている私がいうのもなんですけど、何度食べてもおいしいんですよ(笑)。本当に毎日食べていても、そう思っちゃうくらいで(笑)」
- ライター船橋
- ライター船橋
- 「私、普段、自分の気持ちとか押し付けないタイプで有名なんですけど、第一物産さんのキムチ、絶対に食べたほうがいい! これマジで本当に本当です。こんなにおいしいのは、ほかの店とは違った秘伝の何かが入っているんでしょうね?」
- 三代目・姜恵蘭さん
- 三代目・姜恵蘭さん
- 「ありがとうございます、嬉しいです! うーん、秘伝ですか…。もちろん季節や気候の違いを見極めて、塩加減や温度調整だけなく原料や素材も妥協せずこだわりますが、それは味を守ることにおいては当たり前なんですよね。だけど、先先代のおばあちゃんがいつもこう言ってたんです。『Kimchiにはね、つくるひとの心が伝わるんだよ』って。だからKimchiは、決して手を抜くことなく、食べていただく全ての人の笑顔を想って丁寧に作っていきたいと思ってます。私たちの作るキムチは“食卓が笑顔になるキムチ”なんです」
- ライター船橋
- ライター船橋
- 「いい話~。ところで姜さん。キムチの発音めっちゃいいですね(ニヤニヤ)!」
- 三代目・姜恵蘭さん
- 三代目・姜恵蘭さん
- 「あ、違います。Ki・m・chiですよ!」
- ライター船橋
- ライター船橋
- 「味も発音も本場! って当たり前か(笑)」
店内にはキムチのほか、鍋やチゲの素といったタレ類も充実。キムチ鍋の素やスンドゥブチゲの素は、アミの塩辛や魚介だしが効いているから、そのまま鍋に入れるだけでOK。唐辛子酢みそのチョジャンも、ビビンバはもちろん、刺身や生野菜にディップするだけで、本格韓国料理が気軽に楽しめるそう。
10月~はカキキムチ、11月~はケジャン(カニキムチ)といった季節限定キムチも登場予定。これまた絶品とのこと(絶対に食べたい!)
おばあちゃんから母へ、そして孫へと受け継がれてきた「第一物産」のキムチ。創業以来ずっと、作り手の思いやりがたっぷりこめられているから、何度食べてもおいしくてクセになってしまうのも納得です。
めっちゃ簡単!老舗キムチ店の三代目によるキムチ料理レシピ公開
キムチ屋の娘として生まれ、現在はキムチ屋の社長・キムチソムリエとして活躍する「第一物産」の三代目・姜恵蘭(カンヘラン)さん。キムチを知り尽くしている姜さんだからこそ知る、超簡単なオリジナルレシピを教えて! とオーダー。そんな無茶ぶりもなんのその。姜さん考案のキムチレシピをご紹介いただきます。
三代目直伝レシピ①
「だし&スパイスいらず! コリアンキーマカレー」
【材料】2人前
・白菜キムチ(粗みじん切り、汁はすてない)…200g
・豚ひき肉…200g
・中辛のカレールー(粗みじん切り)…2皿分
・ごはん…2膳分
・青ネギ(小口切り)…適量
・クリームチーズ…お好み
・サラダ油…大さじ1
【作り方】
(1)熱したフライパンにサラダ油をひき、強火で豚ひき肉を炒める。
(2)豚ひき肉に火が通ったら中火にし、キムチを加えよく混ぜ合わせながら炒める。
(3)刻んだカレールーを加え弱火にし、手早く全体にルーが馴染むよう混ぜ合わせる。これをごはんにかけて完成! お好みで青ネギやクリームチーズをのせてもOK。
<三代目のワンポイントアドバイス>
- 三代目・姜恵蘭さん
- 三代目・姜恵蘭さん
- 「白菜キムチは酸味のあるものを使うのがベスト。キムチは汁には、乳酸菌やビタミンなど栄養がたっぷり詰まっているので、最後の1滴まで残さずに使い切りましょう! 炒めることで酸味も和らぎます。残ったタネは冷凍保存して、チャーハンや食パンと合わせるのもおすすめです」
三代目直伝レシピ②
「辛みと甘みの共鳴! サツマイモの豚キムチ炒め」
【材料】2人前
・サツマイモ…1本(中サイズ)
・キムチ(食べやすい大きさにカット)…200g
・豚バラ肉(1口サイズにカット)…200g
・ごま油…大さじ1
【作り方】
(1)サツマイモを皮付きのまま1~1.5cmの幅に半月切りし、平らな耐熱皿に並べラップをし電子レンジ(600W)で3分温める
(2)熱したフライパンにごま油を入れ、強火で豚バラ肉を炒める。
(3)豚バラ肉に火が通ったら、キムチ(汁ごと)を入れキムチの汁が豚肉に馴染むようさらに炒める。
(4)サツマイモを加え、軽く全体的に馴染ませたら完成!
<三代目のワンポイントアドバイス>
- 三代目・姜恵蘭さん
- 三代目・姜恵蘭さん
- 「キムチにサツマイモ!?」と思われるかもしれませんが、韓国では蒸かしたサツマイモにキムチを乗せて、おやつに食べたり辛味と甘味を合わせることが多いんです。辛くて甘くて、なんともいえぬおいしさがあるんですよ。ちなみに酸味の出たキムチは、炒めることでぐんと旨みがアップします。キムチ鍋をするときは、最後にキムチを入れるのではなく、豚肉とキムチを炒めて水とお好みの野菜を加えて煮込むと一段と美味しく召し上がれますよ♪」
伝授レシピ③
「これぞ究極! 韓国的ずぼらごはん」
【材料】1人前
・ごはん…1膳分
・半熟目玉焼き…1個
・韓国のり…お好みで(たっぷりがおすすめ)
・コチュジャン…お好みで
・ごま油…小さじ1
【作り方】
(1)炊き立てのごはんにごま油を回しかけ、ちぎった韓国のりをちらす。
(2)半熟目玉焼きをオン。
(3)コチュジャンをお好みで加えてよく混ぜて出来上がり!
<三代目のワンポイントアドバイス>
- 三代目・姜恵蘭さん
- 三代目・姜恵蘭さん
- 「これを紹介すると簡単すぎてよく怒られます(笑)。 半熟目玉焼きやコチュジャンをご飯とよく混ぜて召し上がってくださいね!」
取材・文/船橋麻貴
撮影/原幹和