犬養裕美子のお墨付き! 空気はパリ! 銀座、ビストロ・シンバ

連載

犬養裕美子のアナログレストラン

2017/11/04

犬養裕美子のお墨付き! 空気はパリ! 銀座、ビストロ・シンバ

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第38回は銀座<ビストロ・シンバ>。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

公園に面した特等席で“パリ”を味わう

春、秋の天候のいい日には、通り側のガラス戸は全開。オープンな店構えに「あいてますか?」と通りがかりに入ってくる人も多い

物件を探していた中、初めてこの場所を訪れたオーナーシェフの菊地佑自さんは、一目で気に入ったという。目の前は小さいけれど緑あふれる公園。
「ガラス戸をできるだけ開けられるようにしたい。気候のいい日は、風を感じながら食事が楽しめるだろうと、すぐにイメージが浮かんできました」と語る。
しかも仕入先の築地まで歩いて約10分と、こんなぜいたくなロケーションはそう簡単に見つかるものではない。家賃は予想をはるかに超えていたが、この場所で頑張る決心をして契約をすることにした。

「シンバ」は、シンプル、風味、味、感じのいいという意味。鍋から香りが立っているかわいらしい店のロゴマーク

実はこの店、近くにある「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務シェフの2店目だった。
菊池シェフはその店のモダンデザインを、ガラリと変えた。壁はオレンジ色に。木のテーブルとイス、壁際にはワインのボトルを飾り、音楽も軽いフレンチポップス。まさにパリのビストロにいるような暖かい雰囲気に生まれ変わった。
「2015年9月にオープンして、初日から満席。ありがたいことに今までお客様ゼロの日がないんです」。

店内はカウンター4席 テーブル16席。オレンジはシェフの勝負カラー
窓際のテーブルからは公園が見える。パリ、ロンドン、NY……。いったいどこにいるのか? 不思議なくつろぎ

公園脇にそこだけ暖かくともる明かりを目当てに、お客が足を運ぶ。店からはおいしそうな香りが流れてくる。そして菊地シェフの直球料理にハートも胃袋もつかまれてしまうのだ。
フランスや日本の自然派ワインも、やさしく体にしみわたる。一人でもゆっくりとくつろげる貴重なビストロだ。

ワインの生産者が来日して、この店に寄った際、壁にサインを残していった。こんな気軽なところがビストロの良さ

フランスに学んだ質の高いビストロノミーを東京で

菊地佑自オーナーシェフは41歳、東京生まれ。フランスで店を出すことも考えたが、うまくいかなかったので2012年に帰国。「今は日本の素材の良さに驚いていますね」と語る

菊地シェフは“料理の鉄人”世代。テレビに影響を受け、フレンチの道を志した。日本で4年修行した後、フランスへ渡り、合計10年ちょっとを過ごした。修行先も地方の星付きから郷土料理の店、そしてパリの話題店と幅広い。
中でも影響を受けたのが、21世紀に入って大きな変革期を迎えていた「ビストロノミー」という概念。菊地シェフが働いたのは、その発端となった「シェ・ミッシェル」高級ビストロ「ラミ・ジャン」など。

フランスのビストロといえばステーキフリット(ステーキとポテトフライ)、鴨のコンフィ(カモの揚げ煮)、ブッフ・ブルギニヨン(牛の赤ワイン煮)など定番料理を用意している定食屋というのがお決まり。
しかし「ビストロノミー」を掲げるレストランは、ビストロの気楽さで、レストランと同質の高級な素材をシンプルに生かした料理を出す。そのエスプリ(精神)がこの店ではぞんぶんに味わえる。

黒板には、季節のメニュー、その日の特別メニューが書かれているので、チェックを忘れずに

前菜には高知県産一本釣りウルメイワシ北海道産大黒さんま天草産スペシャル穴子など、毎日のように築地市場に通う成果が黒板メニューに並ぶ。
そんな多様な皿の中でもスペシャリテは、えび香るシンバ特製ブイヤベース(1人2200円、2人前から注文可)。「シェ・ミシェル」のオマール海老のビスクをヒントにしたうまみたっぷりのスープ。これからの季節はジビエもおすすめだ。
まだまだいろんな引出しがありそうだから季節ごとに通いたい。

えび香るシンバ特製ブイヤベース。注文は2人前から。魚3種(イトヨリ、甘鯛、シマソク)にスープを注ぐ。通常、エビの殻を炒めて香ばしい香りを出すが、これは炒めない、煮詰めない。澄んだえびのスープ
青森秋サバ 菊の花のマリネ 野辺地カブ 1700円。シェリーヴィネガーを使ったドレッシングでさっぱりと
シンバ特製ブーダンノワール 1300円。秋冬はスフレのように軽く、暖かい。 夏はひんやり冷やすことも
スコットランド産雷鳥とフォアグラのファルシ(詰め物)6000円。濃厚なフォアグラが雷鳥にコクをプラス。ジビエは余計な脂肪を蓄えていないので、意外としつこさはない。むしろきれいな後味

ちなみに、「最近、いちばん気に入ってるのが……」と、ここを推薦してくれたのは前回ご紹介した「レストラン・キノシタ」の木下シェフ。二人とも素材の大切さを十分に理解して料理をしている。日本のフレンチ、いい感じだよね。

スタッフは若くてやる気いっぱい! 左から高山南美さん、菊地シェフ、鴨志田啓二さん、岡部英明さん
Yahoo!ロコビストロ・シンバ
住所
中央区銀座1-27-8

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アクセス
新富町(東京都)駅[2]から徒歩約3分
宝町(東京都)駅[A1]から徒歩約4分
銀座一丁目駅[10]から徒歩約5分
電話
03-6264-4218
営業時間
18:00~翌1:00(L.O.24:00)
定休日
毎週水曜日、毎月第2火曜日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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