“一見さん”歓迎! 京都の人情酒場・木屋町で駆け込みたい3軒

特集

秋の京都で。ツウな寄り道してみよう。

2017/11/08

“一見さん”歓迎! 京都の人情酒場・木屋町で駆け込みたい3軒

京都に付きものと言われる「一見さんお断り」が心配で店の扉を開くことができない、そんな人は京都随一の繁華街、木屋町(きやまち)に行ってみよう。無論、常連がカウンターを囲んでいる。しかし挨拶すれば、むしろ積極的に輪に入れることもあるだろう。ぜひ足を運んでほしい3軒をピックアップする。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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訪れる者をトリコにする、木屋町酒場の魅力とは?

\この3軒に立ち寄りたい!/
1.「立ち呑みキセノン」
2.「みず屋たったいす」
3.「バー カオス」

1.立ち呑みキセノン

木屋町の路地に、突如現れた立ち呑みの新星

木製のドアと提灯が目印。小笠原さんのこだわりで、職人に特注で作ってもらったという

夜が盛りの木屋町の中でも、昼間は特に閑散とする13番路地。日の短い晩秋なら、太陽がどっぷり沈んでから開く店がほとんどだ。そこに16時から提灯を掲げる新顔が登場。近隣の立ち呑み屋「きゃさ」で、通称・サワラくんと親しまれた小笠原 哲さんが、2017年10月、満を辞して独立を果たしたのだ。まだ開店前の店内を軒先から覗くと、ピカピカの白木のカウンターが、間接照明の灯りを柔らかく反射。なんとも温かな雰囲気だ。

カウンターの冷蔵ケースには、お手製の小鉢が並ぶ。価格は100〜300円(税込)。この日はひじきや、こぶとかつお節の佃煮などが
店主の小笠原さん。おおらかな性格ゆえ、一見のお客でも安心して過ごせる店だ

小笠原さんは、木屋町に飲みに通ううち、いつしか「きゃさ」のカウンターに立つようになった。「奮発しなくても気楽に飲める店がたくさんあるし、最低限のマナーさえ守れば、どんな酔っ払いも温かく出迎えてくれる土壌があるんです」。ここ「キセノン」でも、お客は互いに好き勝手に話している。が、なぜか最後は笑顔に落ち着く不思議さ。単に店主の笑い声がデカい(おっと失礼!)のもあるが、その日の飲みの口開けに、仕事帰りの癒しに、訪れる人々でカウンターは埋まっていく

芋焼酎「玉露」(400円・税込)と豚の角煮(600円・税込)。「今は小鉢がメインだけど、今後は鶏ハムなど、しっかりしたつまみも増やしていきたい」と小笠原さん
左は「ゆず酒のサワー割り」(600円・税込)と右は「レモンサワー」(600円・税込)。立ち呑みといえど清潔感のあるお店ゆえ、女性客も気軽に立ち寄りやすい雰囲気

ウリは棚にずらっと並んだ焼酎と、税込100円の小鉢。なんとワンコインで晩酌することが可能だ。「今は開店したばかりなのでまだ手一杯ですが、小鉢のほかに、つまみもどんどん増やしていきたいと思っています」。独立した小笠原さんが、これからどんな進化を遂げていくのか。その門出を、木屋町の酒好きたちは、温かい目で見守っている。

常連さんが集まれば、話にも花が咲く。が、一見さんでも溶け込める雰囲気なのは、ひとえに小笠原さんの人柄によるところが大きい

2. みず屋たったいす

飲めば飲むほどお得!木戸銭酒場

入り口は、どこかレトロな雰囲気

生ビールが250円、つまみは300円台が中心で、刺身の盛り合わせですら580円。ドリンクもワインや日本酒、焼酎などを取り揃え、スコッチウィスキー「ボウモア18年」でさえ、750円を出せば楽しめるという驚きの価格。しかも全て税込だ。「お客さんからは入場料として、木戸銭1人1000円(税込)を頂戴しています。そのぶん、お安くできるんです」。店長の大植晋さんは言う。これが飲めば飲むほどお得、安心してたくさん飲める、木戸銭酒場の魅力。しかも300円は、店で使えるクーポンとして戻ってくる。

「刺身の盛り合わせ」(580円・税込)はホタテ、アジ、タコ。日本酒「伊根満開」(450円・税抜)は、古代米の赤米を醸したもの
毎週木曜のみ、お刺身が一品100円(税込)に。写真のように、赤エビ、真タコ、いけつぶ貝、アジ、真鯛を盛り付けても500円(税込)だ

そして、もちろん安いだけではない。左京区市原にある「増田さんの新鮮野菜」や南丹市の「川勝さんから届けられるお米」など、地元・京都の食材をこだわって使用。日本酒も伏見の「英勲」や京都府北部・伊根町の「伊根満開」を揃えるなど、地場のものにこだわる。ゆえに木屋町の酒場の雰囲気と、京都の幸が楽しめる、観光客にもうってつけの場所であるのだ。

これからの季節は、鍋物もおすすめ。「鶏鍋」も1人前880円(税込)の安さ(写真は2人前)。スープにも、トロトロに煮込んだ鶏と野菜の旨味が凝縮されている
スコッチウィスキー「ボウモア18年」も750円(税込)とお安い
店長の大植晋さん(真ん中)とスタッフ。和気藹々とした雰囲気に、心も和む

「こんな安くて、ちゃんと元取れてるの?って、お客さんによく聞かれます」とは大植さんの弁。果たしてその真相は?と問うと、苦笑いでかわされた。とびっきりの良心価格と、笑顔のスタッフのホスピタリティ。ほくほく顔で帰路に着くお客を見ると、ああここは庶民の懐に優しい街・木屋町の良心を凝縮したような店だと、つくづく思うのだ。

ゆったりとしたレイアウトの店内。人気店なので、電話での予約がおすすめだ

3.バー カオス

ただ店主に身を委ね、陶酔できる時間

開店とともに取材に訪れると、すでに常連さんの姿が
「ジントニック」は800円(税込)〜。こちらは柿とチャイスパイスを漬け込んだジンがベース。コク深い甘みと、華やかな香りがする

オーセンティックバーより、やや明るめの店内。カウンターに果物を漬け込んだ酒瓶がずらりと並ぶさまは、理科の実験室の光景を想起させ、初めて来た人なら、どこへ迷い込んだのかと思うかもしれない。しかしオーナーの福岡裕詞さんに促されるまま、まずはスツールに腰を落とそう。「オススメは?」と素直に聞けば、一見、混沌として見える店のメニューが、いかに明瞭な論理で繰り出されているか、きちんと説明してくれる。

「季節のフルーツマルガリータ」(1000円・税込)。マンゴーを主体にオレンジとグランベリーも掛け合わせ、ローズマリーを散らす。フレッシュな果実にテキーラの凛とした味わいが映える
「キューバサンド」(800円・税込)。ニンニクが利いたモホソースなどでコンフィした豚肉をパンではさみ、両面を高温で焼き上げる。外はカリッと、中はとろりチーズとジューシーな肉汁が滴り、酒を呼ぶ味わいだ

果物で漬け込んだジンは、福岡さんの唯一無二のセンスが凝縮されたもの。「柿×チャイ」「メロン×わさび」「ザクロ×パクチー」など、ラインアップは日によって異なるが、組み合わせの妙に思わず唸る。ジントニックとして提供されるが、口内で果実味が弾け、香りが嗅覚を心地よく刺激する。ほかにもバーテンダーとしての経験が生むカクテルや、キンミヤ焼酎を使ったサワーなど、硬軟を織り交ぜた展開。ゆえに何度足を運んでも驚きがあるのだ。

オーナーの福岡さんは、カクテルコンペでの優勝経験もある。腕前とセンスは、その経験から培われたものだ
「スリランカ カレー」(1500円・税込)。合挽きキーマカレーに、パプリカ、ドラゴンフルーツ、きゅうりなどを和えたカチュンバル、牡蠣の煮込みなどがのる。具材により調理法が異なり、多彩な味わい方ができる

「2010年にオープンしたときはウイスキーも出して、もう少し間口の広いバーだったんです。でもお客さんと相談しながら、得意なことを突き詰めていたら、今の形に」。フードは3種類と絞った展開。「スリランカカレー」は酒のアテになるように、と素材ごとに異なる調理法を。最近デビューした「キューバサンド」は、スパイシーで肉汁もほとばしり、サワーやジントニックを呼ぶ味わいだ。「フォー」は〆に最適のメニューだろう。
福岡さんの繰り出す、明瞭で論理的な作品の数々に徐々に深まっていく酔い。心地よく意識が混濁していく感覚は、木屋町のディープな夜の最後にこそ相応しい。

長くなった取材を終えて帰ろうとしたら、初めにいた常連さんが、まだ福岡さんと話し込んでいた。足繁く通い、長く腰を下ろし、杯を重ねるたくなる。そんなお店だ

取材・文/岡野孝次 撮影/三國賢一

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