パン好きマンガ家・堀道広さんがおススメするパン屋4選!

特集

マンガ愛が止まらない。

2017/11/25

パン好きマンガ家・堀道広さんがおススメするパン屋4選!

パン好きのマンガ家として『パンの漫画』などの著書を持ち、情報誌でもパンのイラストを多数手掛ける堀道広さん。うるし職人からマンガ家に転身するという異色の経歴を持つ堀さんにお気に入りのパン屋を教えていただきつつ、堀さんの創作のヒミツをお聞きする!

Yahoo!ライフマガジン編集部

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パン好きの異色マンガ家とパン屋で落ち合ってみた

(青林工藝舎『アックス』収録『俺は短大出』より)©堀道広

この絵、どこかで目にしたことはないだろうか? 異様なまでに太い首、中心から大きくズレている鼻、一見ユルいのだが、不思議と情景がリアルに浮かび上がるような背景画……。

作者は、うるし職人という異色の経歴を持つマンガ家、堀道広さん。

こちらが堀さん

うるしの部活や耳かきをテーマにした異色まんがを世に放ったかと思えば、南海キャンディーズ・山里亮太さんの似顔絵や清水ミチコさんのツアーグッズ、細野晴臣さん著書のイラストを手掛けたりと、そのフィールドはマンガにとどまらない。

そんな堀さんが近年特に活動の幅を広げているのが、パンのマンガやイラストだ。

こちら堀さんが手掛けた作品。そしてパン
(ガイドワークス『パンの漫画』より)©堀道広

今回、堀さんのご近所で足繁く通っているという東京・富士見ヶ丘の「ヨシダベーカリー」にて、パンとの馴れ初めをお聞きした。

大好きなパンを前に目尻下がりっぱなしの堀さん
堀さん
堀さん
「ヨシダベーカリーさんは近所なので、オープンしてすぐ来ました。ここはどのパンも全部おいしくて平均値が高いんですが、普通の角食パン、バゲット、レーズンとくるみのルヴァン、ミルクフランスが特に好き。僕にとって一番身近なパン屋です」
「レーズンとくるみのルヴァン」(2.1円/g)

レーズンとくるみのルヴァンに加えるレーズンとくるみは、ブランデーにハーブを加えた自家製リキュールに漬けこんだもの。むっちりした生地と、みずみずしいレーズンがたまらない。

堀さん
堀さん
「パンの研究所『パンラボ』主宰の池田浩明さんと会うまでは、パンを食べるといえば菓子パンや惣菜パンくらいだったんですけど、パンラボのマンガの仕事でいろんなパンを食べるようになって、“こんなおいしいパンがあるんだ!”と知り、それ以来こういうハード系のパンも好きになったし、初めて行く街ではパン屋さんを探して歩いたりするようになりました。週に一度はホームベーカリーで角食パンを焼いてます」
堀さんもよく買っているという角食パン1斤380円。380円で買える幸せがそこにはある

こちらの角食パンについて、店主の吉田稔さんはこう言う。

吉田さん
吉田さん
「全品国産小麦を使っているんですが、角食パンに使っているのは北海道産です。小麦の風味がしっかりあって、なめらかで、口溶けのよさと存在感がほどよくあるのでなんにでも合わせやすいんです」
アンティークのケースの中に、控えめに並ぶパンが愛らしい
ミルクフランス(180円)。形もちょっとかわいい
堀さん
堀さん
「清水ミチコさんとお仕事をしたときに差し入れで持っていったら、めちゃくちゃ喜ばれたのがこのミルクフランスです。おしゃれなケーキ屋さんのお菓子に等しい価値があるのに、気取らない感じがよくて、よく手みやげにしてます」
Yahoo!ロコヨシダベーカリー
住所
杉並区久我山2-23-29 ハイネス富士見ヶ丘 1F

地図を見る

アクセス
富士見ケ丘駅[出口1]から徒歩約1分
高井戸駅[出口]から徒歩約10分
久我山駅[南口]から徒歩約11分
電話
03-6326-2754
営業時間
11:00~19:00
定休日
毎週日曜日・水曜日
口コミ・写真など

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香ばしい皮がたまらない角食パンが人気 仙川の名店『AOSAN』 

たくさんの食パン。そしてこれがすべて美味しいというのがまた

続いてパンに魅せされたマンガ家・堀さんがおすすめするパン屋さんとイチオシのパンを紹介していこう。まずは、千歳烏山『ブレッダルワン』、柴崎の『パントレシェル』と並ぶ”京王線3大パン屋”と言われる、仙川『AOSAN』へ。堀さんが参加する”パンラボ”作品最新刊の『パンの漫画2』(ガイドワークス)でも紹介しているお店だ。

京王線3大パン屋の一角を担う仙川の名店「AOSAN」。パン好きには有名なお店だ
店内に並ぶ美味しそうなパン、パン、パン
堀さん
堀さん
「おいしいパンの“K点”みたいなものが自分の中にあって、ここのパンは全て『K点越え』してきます。毎日1時間の行列ができるだけあって、なにかが違う気がするのですが、それがなにかわかりません。説明できないけど、おいしいんです。以前取材で伺った際、店員さんがお店への思いを話している途中に、このお店で働けることの嬉しさに感極まって涙を流してらしたことがあって。それほど幸せな気持ちで働ける空間なんだな、と印象に残っています。その『幸せな味』度が、ますますパンをおいしくしているのかもしれません」
堀さんもおすすめする角食パン(1斤250円)。絶品

こちらの角食パンは甘く香ばしい香りの皮と、弾力のある生地が特徴。トーストするとサックリ軽やかで、旨味があるのに食べ飽きない。白いごはんのような親しみやすさと自然な甘みだ。この角食パンを求めて、開店1時間前からお客さんが並び始めるという。

味わい深い木の什器とばんじゅうは、昔の駄菓子屋さんで使われていたものだそう
開店前の忙しいときも笑顔あふれるスタッフのみなさん。取材日は雨だったが、それを吹き飛ばすような幸せなムードでいっぱいだった!
Yahoo!ロコAOSAN
住所
調布市仙川町1-3-5

地図を見る

アクセス
仙川駅[出口]から徒歩約3分
つつじケ丘駅[南口]から徒歩約11分
柴崎駅[出口]から徒歩約22分
電話
03-5313-0787
営業時間
12:00~18:00売り切れ閉店(開店時間は2011/4/12より変更)
定休日
日・月定休
口コミ・写真など

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畑を見ながらゆったりパン散歩したい「かいじゅう屋」

 

続いてご紹介いただいたのは橋本さんご夫妻が2人で営む「かいじゅう屋」。西武立川駅に降り立ち、畑を見ながらのんびり歩くと、農家の軒先のようなかわいらしいお店にたどり着く。

とってもステキな店構え。ガラスケースにはご主人が焼くパンと奥様の焼き菓子が並ぶ

目白で10年続いた人気パン屋だったが、心機一転、立川に移転してリニューアルオープン。このユニークな店名の由来は「かっこよく言えば『降りてきた』というやつでしょうか、不思議とそれしかないと思ったんです」と店主の橋本さん。

「かいじゅう屋」を営む橋本夫妻
堀さん
堀さん
「こちらも、買うものにハズレがないお店です。おいしいパン屋さんほど、ハズレが少ない気がします」
くるみパン(左=330円)、チョココッペ(右=180円)。かじりながらのどかな風景を散歩してみたい

どのパンにも、小麦の素朴な旨味が力強く感じられる。材料はもちろん、発酵、焼き時間などのタイミングをなにより意識しているという。パンを食べ終えると、「かいじゅう屋」という店名とパンの味が、妙にしっくりなじむ気がしてくるのが不思議だ。

民家や畑の続く一角に、突如表れる森のような入口

水曜日には、はす向かいの「鈴木農園」の野菜をたっぷり使ったサンドイッチも楽しめる。都心からはちょっと遠いけれど、このために立川を訪れたくなるような1軒だ。

かいじゅう屋

住所
東京都立川市西砂町5-6-2

アクセス
西武立川駅[北口]から徒歩約11分

営業時間
火・金・土 10:00〜16:00(パンを焼く日)
水 11:00〜14:00(サンドイッチの日)

定休日 月・木・日

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

ベトナムのおいしさそのまま!バインミーが魅力の「kohuku sengawa」

 

最後に紹介するのは、堀さんが街を歩いていて見つけたお気に入りの「kohuku sengawa」。店内で野菜の販売も行う、野菜カフェだ。

堀さん激推しの逸品がこちら。

本格バインミー!レバーペースト&ポークハムサンド(490円※ハーフ280円)
堀さん
堀さん
「ベトナムのサンドウィッチ”バインミー”にハマっています。ここでは注文してからサンドウィッチを作ってくれるんですが、パンや具が、本場の味に近い気がします」
断面からも伝わる具材のフレッシュさ

それもそのはず、ベトナムで現地の味を学んだスタッフが、その味を再現できる日本のパンを探し抜いたのだという。

現地の味に近いパンを求めて いくつものパンを食べ比べたどり着いたのが、多摩地区で5店舗を営む老舗「クラウンベーカリー」のものだった。

「クラウンベーカリー」のパンは、外側はカリッとしていて、中はやわらかく素直に潰れてくれる絶妙な歯切れのよさで、パンと具のなじみもよいのだそう
バインミーに使われるのは、有機栽培の無農薬野菜が中心。ほかにもサンドイッチメニューやスープなどが揃う
Yahoo!ロコkohuku Sengawa
住所
調布市仙川町1-25-4 シティハウス仙川 1F

地図を見る

アクセス
仙川駅[出口]から徒歩約4分
つつじケ丘駅[南口]から徒歩約16分
千歳烏山駅[西口1]から徒歩約21分
電話
03-5314-9240
営業時間
9:00~17:00
定休日
年中無休
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

堀さんおすすめのお店は、堀さんのマンガのように肩の力を抜いて楽しめ、噛めば噛むほど味が出てくるものばかり。お気に入りのマンガを片手に、足を運んでみては?

堀道広さんデビューのきっかけは「割り箸ペン」

ここまで来て思い出したが、これは「パン特集」ではなく「マンガ特集」である(笑)。

ということで、マンガ特集っぽく堀さんの創作の秘密に迫っていこう。

首が太かったり、異様に長かったりと、堀さんの絵には独特のタッチがある。だが、不思議といろいろなものに違和感なく溶け込んでしまうのもまた堀さんの絵の特徴だ。この画風を生み出したのは、なんと「割り箸」だという!

堀さん
堀さん
「たとえば『青春うるはし!うるし部』の主線は、全部割り箸で描いてたんです」
こちらが割り箸で描かれたという『青春うるはし!うるし部』
堀さん
堀さん
「割り箸はインクを含む量が少ないので、一本線を引いたらすぐインクをつけなきゃいけない。だから、割り箸にインクをつける時間と紙の上を往復する時間が長くて、めちゃくちゃ効率が悪いんです。でも、割り箸の書き味が一番自分にしっくりきたんですよ。ちなみに割り箸ペンを初めて使ったのは小学生の頃。先生が、鉛筆と違ってやり直しがきかないからって割り箸ペンを使って描かせていたことがあって、その描き味を覚えていたので、マンガを描き始めてからまた使ってみようと思ったんです」
(青林工藝舎『青春うるはし!うるし部』より)©堀道広
堀さん
堀さん
「僕はもともと輪島塗の修行を経て、社寺建築のうるし職人の仕事などをしていたんですが、工芸は100年、500年と残るものを作る世界なので、マンガよりもずっとシビアです。100年以上鑑賞に耐えうる絵って、じっくり考えて作らないといけないし、何回も同じ下描きを描かなきゃいけない。もっとラフな蒔絵でもよかったら続けていたかもしれないんですけど、伝統的な古い形に縛られるのが合わなくて、うるしから離れました。24歳くらいのときにやっとマンガを描き始めたんですが、当時はつげ義春さんみたいな作品が好きで、つけペンを使って描いてたんですけど、全く箸にも棒にもかからなくて、3、4年うまく行きませんでした」
(青林工藝舎『青春うるはし!うるし部』より)©堀道広
堀さん
堀さん
「で、試しに割り箸で描いて持ち込みしたのが『青春うるはし!うるし部』です。それが雑誌『アックス』に掲載されて、4年後に初めての単行本を出すことになりました。だから、割り箸が自分の画風を作ってくれたともいえますね。ただ今では割り箸は一枚絵を描くときたまに使うくらいです」

割り箸の次にメイン画材となったのは鉛筆

 
堀さん
堀さん
「他に自分の性に合っている画材は鉛筆。鉛筆で描く時の筆圧が、割り箸の描き味に近いんですよ。なのでその後は鉛筆で描くようになりました。パソコンで補正して、鉛筆っぽさをなくしてるんです。今は、シャープペンシルの1.3mmを使っています。芯はBか2Bです。ちなみに『部屋干しぺっとり君』の頃は、鉛筆とペンで描いてますね」
(青林工藝舎『部屋干しぺっとり君』より)©堀道広
堀さん
堀さん
「その前に出した『耳かき仕事人サミュエル』は、サインペンみたいなマジックで描いてます」
(青林工藝舎『耳かき仕事人 サミュエル』より)
堀さん
堀さん
「イラストや、『アックス』で連載中の『俺は短大出』も全部鉛筆で描いてて、色をつけるときはコピックを使ってます。最近は鉛筆を使うプロの人も多くなってきていますね」
(青林工藝舎『アックスVol.88』より)©堀道広
堀さん
堀さん
「やっぱりマンガ家としてつけペンで勝負したいなと思うんですけど、鉛筆のほうが味が出るので、ペンで描いたものをもう一度鉛筆で描き直すこともあります(笑)。鉛筆のほうがラクかと思いきや、何度でも消して描き直せる分、かえって時間がかかったりするんですよ。また、最近は、枠線をフリーハンドで描いたり、絵を枠で囲まないで1コマ空けてみたり、いろいろ試してるんです。骨董好きのひとだまが主人公の『フルタの古道具めぐり』では、わざと枠線の隙間を空けてひとだま感を出し、ゆるさを演出しています」

堀さんはコントロールしづらい画材や、予期せぬ効果が生まれることが好きなのだろうか。そのあたりについて聞いてみると…。

堀さん
堀さん
「それはあるかもしれません。鉛筆で描いた絵をパソコンに取り込んで印刷にかけると、思いがけず薄くなったり濃くなったり、下手すると消えちゃったりすることもあるんですけど、それって神の配剤かなって思ってます。僕、運の力を試して、信じてるところがありますね。意図しないものが入り込むのが面白いと思ってます」

堀さんのパンのイラストがシンプルだけど不思議とおいしそうなのも、そこに秘訣が?

堀さん
堀さん
「というより、からくりがありまして、パンの絵って実は誰でも上手に描けるんですよ。パンのイメージは誰でも頭のなかにあるから、実物を見なくても意外といけるんです。パンの焦げ方って正解がないから、2種類くらいの茶色で塗って色をぼかせば、あれ、意外とうまいな? って感じると思いますよ。黄土色と茶色を駆使すれば誰が描いてもそれっぽく見えるので、やってみてください」

堀さんおすすめのパン屋さんを巡りつつ、絵にもチャレンジしてみたいです! 近年はパン関連のマンガやイラストが多いですが、これからはどんな作品を?

堀さん
堀さん
「イラストの仕事が多いですが、マンガの本質的なところは絵以上にストーリーの面白さだと思うから、そこで勝負したいなって思ってます。あと女の人を描いてっていう依頼はあんまりないんですけど、僕自身は色っぽい美人画を描きたい黄桜のカッパの美人画で有名な清水崑先生とか小島功先生が描いたような美人画を描き続けたいんですよね。2年前に小島先生が亡くなられたので、水面下で何人もその席を狙ってると思うんですけど、実は工芸の世界も一緒で、人間国宝になれるのは1ジャンルひとりだけなんです。美人画のジャンルを継承するのもいいし、この分野ならこの人っていう新しいマンガの1ジャンルを作れたらとも思います」
(ガイドワークス『パンの漫画』より)©堀道広。堀さんの描く美人画、見てみたい

取材・文・撮影/増山かおり
写真提供/株式会社オルテナジー(kohuku sengawa)

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