“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第41回は新橋「かま田」
Yahoo!ライフマガジン編集部
おでんこそ、日本の出汁文化の最強料理
私は、子供の頃からおでんが大好き! つゆを飲むだけでもおいしいし、出汁を吸ったおでん種は2倍も3倍もおいしくなる。鍋の中でさまざまなおでん種の旨味(うまみ)が浸み出し、混ざり合って複雑な味になるのもいい。私の家の味はしっかりしていて決して上品ではなかったけれど、煮込めば煮込むほどおいしくなる(気がした)。
大人になった今も、変わらずおでんが大好きだが、きちんと出汁を取った専門店には「好き」を通り越して「敬意を表する」。コンビニおでんの活躍のせいで、いつでもどこでも食べられるようになったけれど、落ち着いて料理として味わえる場所は本当に貴重だと思う。
前置きが長くなったが、今回はあこがれのおでん専門店、新橋「かま田」。店主の鎌田保義さんは、和食の料理人の道に進みながら、一旦は挫折。試行錯誤の末、自分に合うジャンルをみつけたという。それが「おでん」だった。
「本格的な和食の仕事を覚えたくて、大阪の料亭で修行していましたが、とても厳しくて自分には合わなかった。そんな時、ふと入ったおでん屋さんがとても居心地のいい店で感動しちゃって」と語る。そこで鎌田さんは方向転換。埼玉・大宮の「お多幸」に入り6年半じっくりと基本を学び、2009年3月に新橋に店を構えたのだ。
おでんは常時20種類前後をそろえ、価格は150円から。日本料理を心ざした経験を生かして、先付、お造り、焼き物、おでん、最後に豆腐めし、というコースを用意している。
中でも感心するのがお造り。大間のマグロ(赤身、中トロ)、タコ、タラの白子、アジなど、量は少なめだが、種類は豊富。何より、そのクオリティの高さに驚いた! 紛れもない大間のマグロには、それにふさわしい本わさびが添えられている。
次に西京焼きをいただき、待望のおでんが登場。最初は人気ナンバー1の大根。小さな器に大根の半割と葛あんでとろみをつけた出汁が湯気をあげている。これこそ鎌田さんが考えた“食べる出汁”。
おでん種と“飲む出汁”、“食べる出汁”の相性
スタートは修業した店の出汁をお手本にしていたが、2年目から試行錯誤の末、ひとつの結論にたどりついた。カツオの荒節を使用した出汁は、卵や大根など、味を含ませるおでんに合う「食べる出汁」。本枯節を使った澄んだ出汁は、まろやかな「飲める出汁」。
「澄んだ出汁、最後まで飲み干せる出汁を理想としてきましたが、大根や卵にはちょっとパンチが足りません。ひとつの出汁ですべてのおでん種を楽しませるのは難しい。味を含ませる種には、インパクトのある出汁を用意しないといけないのではと考えたんです」と鎌田さん。その手間を惜しまないことが大切なのだろう。
ほとんどのおでん種はその日に仕込むが、大根や卵は前日から。この2品のために食べる出汁が生まれたのだ。
大根の後は、飲める出汁を張った大皿盛が出て、最後に“豆腐めし”が登場する。ご飯に豆腐というあくまで白い世界。これが専門店ならではの〆(シメ)方だ。
予約用のコースは十分に満足いく内容だが、予約なしで来店しても、2580円のコースがあり、もちろん単品注文も可能。カウンター席や掘りこみ式の席、テーブルなど全28席は満席がほとんどだが、21時前後には入れ替わったり、遅い時間には少人数なら入れる。アラカルトでつまむのも気楽な使い方。
あなたもぜひ、アツアツをどうぞ!
- Yahoo!ロコ新橋 かま田
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- 住所
- 港区新橋2-11-5
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- アクセス
- 内幸町駅[A1]から徒歩約2分
- 新橋駅[JR日比谷口]から徒歩約3分
- 新橋駅[8]から徒歩約3分
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- 電話
- 03-3502-5133
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- 営業時間
- 17:00~23:00(L.O.)
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- 定休日
- 日曜・祝日、12月31日~1月4日
- 口コミ・写真など
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