群馬ご当地パスタチェーン「シャンゴ」の歴史が胸アツだった

特集

独自路線をひた走る!ご当地チェーンがおもしろい

2017/11/30

群馬ご当地パスタチェーン「シャンゴ」の歴史が胸アツだった

群馬県高崎市を中心に、県内のみで8店舗を展開するイタリアンレストラン「シャンゴ」。「パスタの街」と称される高崎市のパイオニア店として存在感を放つ、同店創業49年の歴史を顧みながら、群馬でしか食べられないという独創性に富んだ名物パスタをご紹介。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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高崎市が「パスタの街」って本当なの? 地元民に聞き込み調査

ここは群馬県高崎市。グルメ通の間では「パスタの街・高崎」として知られているらしい。こう呼ばれるようになったいわれは、高崎市に古くから根付く“粉食文化”が関係しているとか。

群馬県は全国トップクラスの小麦の生産量を誇り、とりわけ高崎市は小麦粉を使った「高崎うどん」が地域の伝統食として多くの高崎市民に親しまれている。このような流れから、粉もの料理の一つであるパスタ(スパゲッティ)もよく食されているというのだ。

高崎市のHPにも「人口当たりのパスタ店が全国的にも多いといわれるパスタの街・高崎」と紹介されている(写真は高崎市内に本店を構える「シャンゴ」のパスタ各種)

……なるほど。では実際に、高崎市民の皆さんは自分たちの暮らす土地を「パスタの街」だと認識しているのか、高崎駅前で街頭インタビューを敢行!

\高崎駅前で聞いてみました!/

利便性の高いJR高崎駅は、北関東エリア屈指の規模。たまたま声をかけたのは、生まれも育ちも高崎市という藤原さん(右)と川副さん(左)。彼らに「パスタの街・高崎」について質問!

――高崎市が「パスタの街」と呼ばれていることをご存じでしたか?

川副さん
川副さん
「“パスタの街”というフレーズを言われればピンとはきます。ですが、正直あまり意識はしていません。高崎市内にパスタ店は確かに多いんですよ。私が知ってるだけでも市内に20~30軒あるから、実際はもっと店舗があると思います」
藤原さん
藤原さん
テレビなどでよく紹介される市内のパスタ店といえば『シャンゴ』。市内に系列店がいくつかあるんです。僕も小学生の時から食べてました。今でもお昼時なんかは『シャンゴ』の前に行列ができてますよ
川副さん
川副さん
「あぁ『シャンゴ』ね。古いよね、あそこは。高崎市民からの知名度はかなり高いと思う。私も子供の頃、家族で食べに行きましたし、今は自分の娘を連れてときどき通っています」

地元の方もパスタと言われれば、ここ高崎であると無意識的に刷り込まれているよう。そんな彼らがパスタ店ひしめく高崎市内において、真っ先に店舗名を挙げたのが老舗として知られる「シャンゴ」。どんなパスタをふるまうお店なのか、現地に向かい、いざ実食。

“パスタ街・高崎”を代表する名店「シャンゴ」に行ってみた

瀟洒なビルが老舗の風格を漂わせる「シャンゴ 問屋町本店」

高崎駅から車で約15分の場所に「シャンゴ 問屋町本店」はある。モダンなレンガの外壁が目を引くイタリアンレストランだ。店内に一歩入ると、白を基調とした明るい空間が広がり、レトロなテーブル席が落ち着きを演出する。昭和の洋食レストランの名残りを醸す雰囲気がとっても居心地よい。

クラッシックなテーブル席でゆったり食事を楽しめる。ステンドグラス、壁に掛けられた美しい絵画が飾られ、親しみやすさの中にもセンスが光る

看板メニューはカツが乗った「シャンゴ風」。その量にも驚き!

出迎えてくれたのは、「シャンゴ」の2代目オーナーシェフを務める関﨑晴五さん。「初めてウチにいらっしゃるお客様は、“シャンゴ風”を頼まれる方がとても多いです」(関﨑晴五さん)

“シャンゴ風”の略称で創業当初から愛される、看板&名物メニューの正式名称は「シャンゴ風スパゲッティ」と言う。スパゲッティになんとトンカツが乗り、その上から同店オリジナルのミートソースをとろりとかけた逸品だ。脂身の甘さ際立つカツの肉質はきめ細かく、スパゲッティと合わせて食べても不思議とクドさがない。さらに甘めのミートソースが口の中に広がり、初めてなのに、どこか懐かしさを感じる味わいなのだ。

「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ風スパゲッティは全店舗合わせて、ひと月、5000食以上の注文があるんです」
創業49年目を迎えた「シャンゴ」の歴史とともにある「シャンゴ風スパゲッティ」(860円•M/200g)。Sサイズ150gは790円

シャンゴ風スパゲッティは、オーナーシェフ・関﨑晴五さんの父であり、「シャンゴ」創業者の故・関﨑省一郎さんが考案。スパゲッティ+カツという斬新すぎる一品だが、発想は至ってシンプルで、カツカレーの応用だったとか。

「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
カツカレーがあるのならスパゲッティにカツもアリだろう、と。商品開発時は、きっとカツを乗せたスパゲッティにカレーのルゥをかけて試したと思いますが、やはり父の自信作であるミートソースに落ち着いたのでしょう」
秘伝のミートソースは300円(1人前160g)でテイクアウトできる。自宅で“シャンゴ風”が味わえるとあって大人気だと言う。シャンゴ風のカツに使用するのは、麦を肥料として与えた群馬県産の上州麦豚

「シャンゴ」のパスタは、そのボリュームも評判だ。標準的なパスタの麺の量は120~150gだが、「シャンゴ」は普通サイズのMで麺200g。さらにメニュー表にはMサイズまでしか掲載されてないが、実はパスタ各種全品、L(250g)、LL(300g)の4つのサイズから選べるのだから驚きだ。文字だけでは、なかなかボリューム感が伝わらないのが歯がゆいところだが、一般的な成人男性でもMサイズで、十分な満腹感を得られる大盛りの量であることは言っておきたい。Lサイズ以上は、超ド級のボリュームだ!

「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「大盛りのパスタ。これも父の代から受け継いでいます。食糧難の戦後育ちの父は常に空腹だったそうです。そんな実体験から『おいしい料理をたらふく食べてもらいたい』という父の思いが麺のボリュームに反映されています
「シャンゴ」は高崎市内に3店舗とアグーリ店(高崎駅構内のフードコート)、群馬県内に5店舗(1店舗改装休業中)。(左上から時計回り)「問屋町支店」、「Due伊勢崎店」、「倉賀野バイパス店」、「前橋南店」

創業49年。高崎の老舗イタリアン「シャンゴ」の歴史をたどる

屋号はアフリカのナイジェリアに古から伝わる“大地の神シャンゴ”から拝借したそうだが、命名の理由は不明。亡き創業者のみぞ知る

1968年(昭和43年)、高崎市請地町にイタリアンレストラン「シャンゴ」はオープンした。店内のオープンキッチンの中には、丈の高いシェフハットを被り、コックコートに身を包んだ創業者の関﨑省一郎さんの姿があった。当初からイタリアンと銘打ってはいたものの、パスタやナポリタンの他に、カレーもメニューに並ぶといった、いわゆる、街の洋食屋さんだったそう。

創業当初の「シャンゴ」のオープンキッチン。昭和40年代の懐かしい洋食レストランだ
店内の様子。テーブルクロスを敷いた上品さ感じる座席やランプといった洒脱なインテリアから創業者の強いこだわりが感じられる

オープンから4年後の1972年(昭和47年)、区画整理のため、現在の「問屋町本店」がある高崎市問屋町へと移転。この頃から、今も不動のレギュラーメニューとなっている“シャンゴ風スパゲッティ”や“ベスビオ(辛口トマトスパゲッティ)”の味が話題を呼び、イタリアンレストランとしての「シャンゴ」が高崎市民に少しずつ認知されていく

「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「とはいえ、昭和40年代の高崎市でイタリアンは、まだまだ未知なる料理。ピザと合わせてライスを注文するお客さんが多くて父も困ったようです(苦笑)」
辛口トマトスパゲッティ「ベスビオ」(780円•M/200g)。Sサイズ150gは710円。イタリアの火山の名前をメニュー名にした、創業当初からの人気メニュー
昭和47年頃の本店(上)と同じ立地にある現在の「シャンゴ」。「“三角屋根のシャンゴ”の名で知られるようになったんです。当時2階は私たち家族が暮らす自宅でした」(関﨑晴五さん)

移転後の「シャンゴ」は、欧州を意識した建物に様変わり。田んぼだらけだった当時の高崎市において、モダンなイタリアンのレストランは地元の若者たちの心をくすぐった。若いカップル客がお洒落なデートスポットとして利用した。また、移転した新店舗の前を高崎市道高崎環状線が通っていたことから、車で来店する客も増えたという。

「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「近くの高崎経済大学の学生さんが足繁く通ってくれて、数十年後に『私の青春の場だった』と懐かしんで再来店される方が大勢いるんです。高経大の学生さんはアルバイトとしても、当時から今も力を貸してもらっています」

常連客だった若者たちがやがて家族を築き、子供たちを連れて再び訪れる。そんな彼らの子供たちも結婚し、今度は孫を連れて大家族でやって来る……。いつしか「シャンゴ」は、家族3世代を見守り続けるお店になっていた。パスタの街・高崎では、高齢者の方でもイタリアン料理店でパスタを食べる日常が、今や当たり前の光景だ。

高崎パスタ文化の草分け! 料理人・関﨑省一郎さんの功績

東京や静岡のレストラン、ホテルで料理修行を積み、故郷の群馬県に戻り「シャンゴ」を開店した関﨑省一郎さん(2011年逝去)

「シャンゴ」の関﨑省一郎さんの功績は、高崎市民にイタリアン・パスタ文化を根付かせただけではない。関﨑流のイタリアンを学ぼうと「シャンゴ」で修行に励む若き料理人たちの人材育成にも力を注いでいた。「シャンゴ」で経験を積んだ料理人たちが独立し、高崎市内外でイタリアン・パスタ店を次々とオープンさせていった。その店で腕をふるった“「シャンゴ」の孫弟子”たちも、やがて自分の店を持つように。

屋号こそ違えど、ルーツを辿ると「シャンゴ」に行き着く。「シャンゴ」は、関﨑省一郎さんは、高崎のイタリアン・パスタ文化の裾野を職人側からも広げた人物でもあったのだ。

関﨑省一郎さんは、「ボンゴレ」(860円•M/200g)を作る際に破棄していたアサリの煮汁の旨味に着目し、本場イタリアにはない日本独自の「スープスパゲッティ」の考案者ともいわれている(諸説あり)
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「味の妥協を一切しない職人気質の人であり、頑固さと温情の深さをあわせ持つ偉大な経営者であり、何より尊敬できる父でありました」 
音楽好きで、店内のレコードプレーヤーからは当時最先端の音楽が流れていた

父の背中を追って。「シャンゴ」2代目シェフの挑戦と進化

1997年からシェフの一人として「シャンゴ」の厨房に立ったのが、関﨑省一郎さんの息子・晴五さんだ。現在は「シャンゴ」2代目オーナーシェフ、そして「問屋町本店」はじめ9店舗(1店舗改装のため休業中)の経営に携わる。父・省一郎さんが経営者として大切にしていた理念を引き継いでいると話す。

「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「父が貫いた経営理念は『ウマい料理でなければダメだ』です。とても単純明快な言葉なのですが、お客さんに対しての『いらっしゃいませ、ありがとうございました』がきちんとできていないと、せっかくのおいしい料理が台無しになってしまう。つまり、料理の味、接客サービス、お店の雰囲気を常に完璧なものにして提供すべきであるということなんです。そんな父の言葉に続けるなら『基本に、忠実に、丁寧に』。これが私の信念です」
東京のレストランなどで腕を磨いた「シャンゴ」2代目オーナーシェフ・関﨑晴五さん

2代目は、味の質の向上への惜しみない試行錯誤を今もなお続けている。その一つがセントラルキッチン(キッチン工房)の設営だ。この場所で、「シャンゴ」全店舗の麺やミートソース、トマトソース、ベシャメルソースといったソース各種を作り、品質の維持を実現している。

「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「ウチのシェフたちは個性ある職人集団のためか、各店舗で味のバラツキが目立っていたんです。そこで、セントラルキッチンで麺とソー スを8割方完成させておく。ですが、職人集団の良さも活かしたいので、残りの2割の味の仕上げは現場で決めてもらうようにしています」
2007年にセントラルキッチンを建設。「以前と比べて、格段に味が良くなりました」(関﨑晴五さん)
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「ほかにも、トマトや舞茸、ルッコラなど群馬・高崎産の食材を積極的に使うようにしています。群馬・高崎に来ないと味わうことができない料理を提供したい。そんな思いが私には強くあります」
親子2代で懇切丁寧に紡がれていく「シャンゴ」の味は、日々進化を遂げている

2009年から毎年11月頃に開催される高崎市の一大イベント「キングオブパスタ」には皆勤賞で参加。高崎市内のライバル店とパスタの味を競い合い、毎年の順位がはっきりと結果発表される料理人・店舗側にとってはシビアな大会だ。2010年の第2回大会、2012年の第4回大会では、関﨑晴五さんの創作パスタが見事1位を獲得。だが、賞を獲れずに悔しい思いをする年も、当然ある。それでも、毎年出場すると心に決めている。

「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「シャンゴ」2代目・関﨑晴五さん
「老舗店のメンツやプライドがあるので、生前の父は参加を反対していました。ですが私は、イベントを通じて県内外にパスタの街・高崎を広く情報発信することに意義を感じているんです。もちろん、今年の『シャンゴ』はどんなパスタを作るの?なんていう、皆さんの期待にも応え続けたいと思って取り組んでいます」

偉大な創業者の背中を追い続ける、2代目の飽くなき挑戦はこれからも続いていく――。

2代目と明るいスタッフの皆さん。お客様を迎え入れる態勢は万全。パスタの街に訪れたなら、まず「シャンゴ」へ!

シャンゴ 問屋町本店

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

取材・文=中田宗孝、撮影=齋藤ジン


\よその地方チェーンも気になる!/


\群馬ネタ集めました/

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Yahoo!ライフマガジン編集部

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